楽しい縮小社会

書影

著 者:森まゆみ、松久寛
出版社:筑摩書房
出版日:2017年6月15日 初版第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 日本は2011年ごろから人口の減少局面に入っていて、このままの出生率で推移すれば、2050年にには1億人を下回り、2100年には6500万人を切る、と予測されている。様々な政策が功を奏すれば、もっと緩やかに減少させていくことは可能だけれど、減少すること自体をは「不可避」なのだ。

 本書は、このような背景があって記された。社会が縮小していくことを、悲観的にのみ捉えず「「小さな日本」でいいじゃないか」という。縮小することには良い面もあるし、何よりもそれに備えることで、よい未来を築くことができる。いや、それに備えることでしか、よい未来は築けない。人口減少は「不可避」なのだから。

 著者の森まゆみさんは作家で、長らく環境保全の活動に携わる。1993年の著書で「建物は新しく建てるより直して使う」など、使う資源を徹底して減らす「後ろ向きに前進しよう」という提案を行っている。ほとんどの部分は共感を覚えるのだけれど、過激すぎるのでは?と思うところがほんの少しだけあった。

 もう一人の著者の松久寛さんは工学博士。京都大学名誉教授。1973年に「京都大学安全センター」、2008年にに「縮小社会研究会」を設立した。研究会には幅広い分野の人たち百数十人が会員になっているそうだ。本書は基本的にはこのお二人の対談集。

 「縮小することの良い面」をひとつ。それはエネルギーの消費が減ること。例えば、世界で石油は現在の消費量の100年分ぐらいあるそうです。それだけでもけっこう切羽詰まった感じですが、もし年5%増えると35年で無くなってしまう。でも、人口が減っていけば(それに比例してとはいかなくても)消費エネルギーも減らせる。

 お気づきだろうか?このまま行けば、エネルギーが潰えてしまうかもしれない。「縮小すること」は「良い面がある」どころではなくて、場合によっては「人類の存亡のキーファクター」にさえなる。私たちの身に染みついた「成長=善」「縮小ってなんか暗い感じする」という感覚から、抜け出さなければならない時が来たのではないだろうか?

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