著 者:柚木麻子
出版社:幻冬舎
出版日:2014年12月5日 初版 2017年7月25日 4版 発行
評 価:☆☆☆(説明)
著者の本はこれまで「ランチのアッコちゃん」「本屋さんのダイアナ」「ナイルパーチの女子会」と3冊読んでいて、どれも女性同士の関係を描いていた。出版年で言うと本書はこの3冊に先立つ作品で、やはり女性同士の関係を描く。
登場するのは主に3人の女子大生。一人は羽柴真実子。小樽から横浜にある聖フェリシモ女学院に進学してきた。次は浅野美里。真実子の幼稚園時代からの親友。同じ大学、同じ寮、同じ部屋。身体の弱い真実子の世話を何かとやいている。最後は増村栞子。真実子たちの1年先輩。14歳の時に詩集を出版して作家デビューしている。
真実子は13歳の時に栞子の詩集を読んで魅了された。大学でその栞子と出会った真実子は、すぐに彼女の崇拝者となった。それも一途に。どんなことでも言うことをきき、呼び出されれば飛んでいく。真実子は喘息を患っているのに、栞子は平気で真実子の前で煙草を吸う。
美里から見て、真実子の崇拝ぶりは度を越している。何より栞子は「14歳の時に詩集を出した」以外には、これといった魅力があるわけではない。だから美里は、真実子をたしなめる。栞子のことが気に入らない。
栞子の方も美里のことが気に入らない。栞子は自分が「普通の子と違う」ことに価値を見出している。だから煙草を吸うし、けだるそうに話すし、何かに真面目に取り組んだりしない。真実子の自分を崇める目が心地いい。敵意や軽蔑が潜む美里の目は気に入らない。
真実子は、栞子のことを崇拝しているし、美里とは自他ともに認める親友だ。こうして、女性3人の三角関係が出来上がる。三角形のどの辺でも衝突や綱引きを起こしながら、物語は真実子たちの大学の4年間を描く。
私は50代の男で、強いて言えば話の中でしか登場しない、彼女たちの父親に近い。というか、私にも大学に通う娘がいるので、父親そのものだ。だからその目で見てしまう。
美里はともかく真実子も栞子も、もう心配でならない。真実子なんか死んじゃうんじゃないの?と思う。栞子は「イヤな女」キャラなんだけれど、無駄なプライドを抱えていて、それが呪いとなっている。飄々としているけれど、実は一番不安定だ。
そうそう、男性も登場する。ゲスな大学教授と、自分探し中のカメラマン志望。どっちもダメダメ。
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