苦労して成功した中小企業のオヤジが新人のボクに教えてくれた 「上に立つ人」の仕事のルール

書影

著 者:嶋田有孝
出版社:日本実業出版社
出版日:2017年9月10日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 著者の嶋田有孝さまから献本いただきました。感謝。

 著者の嶋田さんは、日経サービスというビル管理などの事業を行う会社の社長を務めておられる(ちなみに、日本経済新聞社の日経グループとは関係ない)。本書のタイトルにある「中小企業」とはこの会社で、「オヤジ」とは著者が入社した当時の会長で、「新人のボク」は著者自身だ。本書は今から30年近く前の、著者と会長のエピソードが23編つづられている。

 会社は当時、大阪の東心斎橋にあって、年商28億円。創業者は会長で、どいうわけか社長を兼ねていた。つまり会長は「大阪の中小企業の創業社長」。ステレオタイプで人を決めつけてはいけないが、本書を読めば、会長がこの「大阪の~」で思い浮かべるイメージ通りの人だと分かる。

 最初の出会いのエピソードがこう始まる。

 「おい、そこのメガネ」「何キョロキョロしとんねん。お前や」

 これが入社初日の昼休みのこと。それで会長が著者を呼んだ用件というのが「バナナこ買うてきてくれ」だった。

 この後も「アホ」「ボケ」「帰れ」と罵倒されたりもして、今の時代なら完全にパワハラ。いや今の時代でなくったって当時でも問題だろう。しかも時代はバブル景気真っ最中で、有名私大を卒業している著者なら、探せば他に就職先は見つかっただろう。でも、そうしなかった。その理由も本書を読めば分かる。

 会長は社員一人ひとりの適性や人間性を見抜いて、育てるために絶妙な塩梅で厳しくしている。そして社員たちにもそれが分かる。だから罵倒されても辞めないのだ。厳しさは、社員をとても大事にしている裏返しだ。それは、必ずしも優秀な人材を採用できるわけではない、中小企業の経営者としての冷静な判断でもある。本書は面白くてタメになる。

 最後に。何度も登場するセリフがある。「お前ならきっとできる」。こんなことを真正面から言う上司なんてなかなかいないと思う。言われたらグッとくるだろう。 

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