著 者:望月衣塑子
出版社:KADOKAWA
出版日:2017年10月10日 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
著者は東京新聞の記者。彼女の名前はネットを中心にしてずい分と有名になった。通常は、新聞社の記者の名前が、そうそう人の口に上ることはない。新聞の記事に署名はついているけれど、よほど注目を集めた記事や関係者でもない限り、記者名を気にすることはあまりないからだ。
また「望月衣塑子」という名前は覚えていない人でも、「官房長官の会見でしつこく質問を繰り返す女性記者」には、心当たりがある人が多いのではないかと思う。本書はその望月記者が自分の生い立ちも含めて、新聞記者の仕事、先輩や取材相手から教わってきたこと、などを記したもの。
彼女は小学生のころは児童劇団、中学では芸能事務所にも所属して、演劇の道を志していたそうだ。中学2年生の時に、フォトジャーナリストの吉田ルイ子氏の「南ア・アパルトヘイト共和国」という本に出会ったことが、ジャーナリストを目指すきっかけとなった。
そして、慶應義塾大学の法学部政治学科に進み、就職活動では新聞社や放送局を回って、最初に内定を手にした東京新聞に就職する。..と書けばあっさりしているが、大学時代のサークルやゼミ、留学先でのエピソード、就職活動で大手は軒並み落とされまくる経緯は、とても「あっさり」ではない。
さらに、東京新聞の千葉支局に配属された駆け出し記者時代等々「なるほど、こうやってあの望月記者が出来上がったんだ」という内容だった。ただ、本書を読む人は「望月記者の人となり」だけでなく、「あの官房長官会見の周辺事情」も知りたいと思っているはずだ(少なくとも私はそうだ)。心配ない。著者はそれにもちゃんと応えている。
安倍政権を「支持する人」と「支持しない人」との間の溝が深い。「支持しない」を「反安倍政権」と捉えるのは、根本的な誤りだけれど、その「誤り」が溝を深くしていると思う。そして、著者も「支持しない」けれど「反安倍政権」ではない。記者として当たり前のことをやっているだけだ。
著者がジャーナリストとしてこれまでに得た情報や事実は、広く知らせる公益性があることが多い。本書を読めばそれが分かる。おそらく今後得るものもそうだろう。その「公益性」の対象には「支持する人」も入っているのだけれど、それを理解してもらうのが難しいほどに溝は深い。残念。
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