キラキラ共和国

書影

著 者:小川糸
出版社:幻冬舎
出版日:2017年10月25日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 本屋大賞ノミネート作品。昨年の本屋大賞で第4位となった「ツバキ文具店」の続編。「ツバキ文具店」は、NHKで多部未華子さん主演でドラマ化された(公式サイト)。

 主人公は前作と同じで雨宮鳩子(ポッポちゃん)。いや本書の冒頭で守景鳩子になった。前作で知り合った、近くでカフェを営む守景蜜朗(ミツロー)と結婚したのだ。前作の最後でミツローさんがポッポちゃんをお寺の境内でおんぶしたシーンがある。その時から付き合い始めてそれから1年足らず、だそうだ。

 ポッポちゃんは「ツバキ文具店」という文具店を営む傍らで、手紙の代書を請け負っている。こんなご時世でも手紙の代書を依頼に来るお客は一定数居て、ポッポちゃんは、依頼人の事情を聴いて、文面だけでなく、紙や封筒、筆記具、インクの色、字体、切手まで選んで、手紙を書いて投函する。

 前作は、この代書の依頼を主に、ポッポちゃん自身の身辺を従に描いた。本書では、主従が代わって、ポッポちゃんの物語が主になった。象徴的なのは、本書でポッポちゃんが最初に書く手紙が、自身の結婚のお知らせだったことだ。

 なんと言っても新婚だから...。行間から幸せが立ち上ってきて、甘い香りがしてきそうな物語。「私は恥ずかしくて「モリカゲさん」と言ってしまう。ミツローさんは、私のことを「ポッポさん」と呼んだり「ポッポちゃん」と呼んだり、たまに..」なんてあって、「どーでもええわ、好きなように呼びなさい」と思ってしまう私は、少し羨ましいのだろうきっと。

 タイトルだって「キラキラ共和国」で、なんだか浮足立った感じがする。ただ、これには意味付けがあって、隣家の婦人が教えてくれたおまじないに関係している。心に暗闇ができた時に「キラキラ、キラキラ」と唱える。今はちょっと「アホらしい」と思うけれど、いつか使う時がくるかもしれない。

 こんなおまじないが必要だったことで分かるが、ポッポちゃんもミツローさんも、結構深刻な事情も抱えている。それを一つ一つ乗り越えての結婚であり、その後の本書で描かれる約1年も、そうしたことの連続だった。ポッポちゃんに幸あれ。

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