情報リテラシーのための図書館

著 者:根本彰
出版社:みすず書房
出版日:2017年12月1日 第1刷 発行
評 価:☆☆☆(説明)

 タイトルに掲げられている「情報リテラシー」も「図書館」も、私の関心事なので読んでみた。

 最初に指摘しておくと、本書のサブタイトルが「日本の教育制度と図書館の改革」で、こちらの方が本書全体の内容をよく表している。「情報リテラシー」は、論考の導入部、または「日本の教育制度」や「図書館の改革」を考える際の「視点」として位置づけられる。

 大づかみに内容を紹介する。まず「ネット社会」や「情報リテラシー」をテーマに3章。日本人の「学び」をテーマに、江戸時代に一旦遡ってから昭和期までで2章。図書館の現在と教育改革をテーマに3章。「情報リテラシー」に戻ってまとめの1章。計9章。

 というわけで「情報リテラシー」について、分量的には期待ほどではなかったのだけれど、とても興味深い指摘がしてあって、内容的には読んでよかったと思った。その指摘は、日本の「情報リテラシー」の理解が「システムの利用法の習得」言い換えると「技術的なこと」を中心にしている、というものだ。

 このことは、アメリカでの理解との比較で述べられている。アメリカでは「技術的なこと」は軽く済ませて、個々のサービス(例えばウィキペディア)が何を提供するものなのか?その情報にはどのような特性があるのか?注意すべきことは何か?などを具体的に学ぶ。一言でいえば「実践的なこと」を中心にしている。

 ネット上の情報のかなりの割合が、意図的であるか否かを問わず「誤った情報」だと、私は思っている。そうだとすると「ネット上には誤った情報もある」ということを知っているだけではなく、具体的なサンプルを利用して「この情報は間違っている。それを見抜くにはこうすればいい」というトレーニングが必要だと感じた。

 最後に。日本の将来のために、実践的な「情報リテラシー」を習得するために、図書館に対する期待は大だ。そのためには、司書を始めとする、もっと手厚い人員配置が必要だと思う。

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