追及力 権力の暴走を食い止める

書影

著 者:望月衣塑子 森ゆうこ
出版社:光文社
出版日:2018年1月20日 第1刷 発行
評 価:☆☆☆(説明)

 東京新聞の望月衣塑子記者と、自由党所属の参議院議員の森ゆうこさんの対談。望月さんは菅官房長官の会見での食い下がるような質問で有名になった。森さんは農林水産委員会で加計学園問題を問い質す姿が度々テレビのニュースで放送された。

 そのお二人が、「自分たちの原点」「森友・加計問題」「権力の暴走」「問う技術」「国難の本質」について語り合う。お二人は、安倍政権に対する厳しい姿勢だけでなく、(望月さんは2人森さんは3人のお子さんの)母親である、ということも共通している。子育ての話題はほとんどないけれど、互いに共感を感じていることはよく分かる。

 望月さんについては、以前に著書「新聞記者」を読んでいたこともあって、「新しく知る」という意味では、森さんについてが多かった。

 例えば、「基本的に答弁する人たちはみんな責任を負って対応していて、そこに対する敬意を忘れないようにしないといけない」とか、「追及される方もそれなりの事情があるわけで..」とか。相手の立場も尊重する気持ちを持って事に当たっていること。(この点では望月さんも同じ想いがある)

 例えば、小泉内閣の官房副長官だったころの安倍晋三さんや、第一次安倍内閣の総務大臣だった菅義偉さんとは、いい関係を持っていたこと。森さんにしてみれば「あのときは本当にお二人とも国民の皆さんを救おうと一所懸命でしたよね」と、今の変容をチクリと刺したいところらしい。

 森さんのところに「将来、恩返ししますから」と、高校生が奨学金の充実の陳情にきた話は、悲しく寂しかった。その他には、今治市職員の官邸訪問を示す文書の発見の一部始終とか、翻弄される官僚たちのこととか、望月さんから官邸記者クラブやありようとかの「ウラ話」的なことが話されて興味深い。

 最後に。政治的な方向性を共有して、共感を感じている二人が語り合っているのだから、その様はヌクヌクとして居心地がよさそうだ。こういう本は「シンパ」は褒めるけれど「アンチ」からは攻撃される。もうそこは変わらない。この本は両者の溝を深めるだけかもしれない、そう思うとむなしい。せめて「モリカケは、もうそろそろいいんじゃないの?」という「中間」の人に、少しでも響くといいのだけれど。

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