消えたフェルメール

書影

著 者:朽木ゆり子
出版社:集英社
出版日:2018年10月10日 第1刷 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 昨年の11月に「フェルメール最後の真実」という本を読んだ。実はその前に「上野の森美術館」で開催された「フェルメール展」に行って、9点のフェルメール作品を観てきた。私は、美術展には好きでよく出かけるけれど、美術の専門家ではないし、ましてやフェルメールに詳しくもないけれど、「フェルメール展」をきっかけのに、ちょっと興味が湧いて、本書も読んでみた。

 本書のテーマはフェルメール作品の盗難事件。著者はノンフィクション作家で、美術作品をテーマにした著書が多い。特に「フェルメール全点踏破の旅」「盗まれたフェルメール」「謎解きフェルメール」と、フェルメールに向ける関心には並々ならぬものがあり、本書のテーマの盗難事件についても、長く追い続けている。

 フェルメール作品は、これまでに5回盗難に遭っている。中には2回盗まれた作品もある。5回のうち4回は、大きな損傷を受けたものもあるけれど、作品は戻って来た。本書は残る1回、今もって行方が分からない「合奏」という作品の盗難事件を中心に据えて、他の盗難事件やフェルメール作品の来歴などを、テンポのいい筆致で描く。

 著者の意図とは違うだろうし不謹慎だと思うけれど、読んでいてワクワクしてしまった。かなり詳しく事件の詳細が描かれていて、それはまるで映画の1シーンのようだ。逆の視点から見ると、「名画の盗難」が度々映画やドラマになるのもムリはないと思った。実際の事件がこれだけドラマ性があるのだから。

 本書を読んで思ったことが3つ。

 一つ目は、絵画の周辺には興味深いことが色々とあること。前に読んだ「フェルメール最後の真実」は、作品の「貸し借りを手配する人々」に焦点を当てたものだし、本書は「盗難事件」だ。双方から「作品の来歴」に関する興味も喚起された。

 二つ目は、私が上野で観た絵にはそういう経緯があったのか!ということ。「手紙を書く女と召使い」は、2度の盗難に遭って戻って来た。戻って来た際の修復や検査の度に、新しい発見があったそうだ。後に塗りつぶされたものが発見されたり、透視図法技術に使われた針穴が見つかったり。できればもう一度観たい。

 三つ目は、これから新たなフェルメール作品が見つかるかもしれない、ということ。17世紀に行われた競売の記録に載っている21枚のフェルメール作品のうち3点は「現存しない」。でもどこかに眠っているかもしれない。

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