編著者:三浦まり
出版社:朝日新聞出版
出版日:2016年4月25日 第1刷 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
以前新聞に、「これまで1度も女性が、議員にも役所の課長以上にもなったことがない」鹿児島県の市のことが載っていて興味を持った。そうしたら引き寄せたように「女性議員」についての情報が集まってきた。本書はその一つで、図書館でいつも見る「新刊コーナー」にあった。3年前の本なのに。
編著者の三浦まりさんは上智大学法学部の教授。専門は現代日本政治論、比較福祉国家、ジェンダーと政治。本書は執筆者7人による共同研究の成果。共同研究では、科学研究費補助金(科研費)を活用したり、全国会議員への郵送調査、女性国会議員へのインタビュー調査などを行っている。
内容を概観する。「女性議員に関するこれまでと現況」「90年代の躍進」「2000年以降の停滞」「国会議員へのキャリアパス」「女性議員と男性議員の違い」「地方の女性議員」「女性が政治に参画するために」。包括的な内容で、今後の研究や実践の基礎になる素晴らしい研究だと思う。
とても示唆に富んだ内容だと思うと同時に、「女性議員増加の必要性」を調査によって明らかにすることや、効用(メリット)の観点で論ずることの限界も感じた。
「示唆」の一例をあげる。1990年代の調査で多少古いけれども、衆議院議員へのキャリアパスで、男性議員は地方政治家、政治家秘書、官僚で77.9%もあるのに対して、女性は15.1%しかいない。その代わり、大学等の教員、法曹関係が多く33.4%あるが、男性は13.8%しかいない。(複数の職業を経ている場合があるので合計は100%を超える)
これから読み取れるのは、女性は「専門分野を学んだ」人が多く、男性は「政治を学んだ」人が多い(というか大半)、ということ。敢えて極論すると、男性は「国会議員になりたくて」、女性は「何かを実現するために」国会議員になった(人が多い)。私たちは、もっと専門性を持った人を国会に送るように努めた方がいいのではないか?。もちろん、それは男女を問わずだけれど。それが私が得た「示唆」。
「限界」について。調査で女性議員と男性議員の政策志向の違いなどを明らかにしようとしたが、芳しい結果は得られなかった。現在の国会は「議員個人」よりも「政党」が優先される。「女性」というくくりで傾向を見つけるのは難しい。
だから「女性議員が増えるメリットは何?」という問いには、調査では答えが出ない。それよりも逆質問が有効だ。「男性議員ばかりいるメリットは何?」
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