著 者:瀬尾まいこ
出版社:文藝春秋
出版日:2019年3月8日 初版第1刷 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
「こんな家族もありなのか?」と、戸惑いながらも暖かい余韻の残る本だった。
「そして、バトンは渡された」で本屋大賞を受賞した著者の最新作。(そう言えばこの大賞受賞作も「こういう親子や家族もありか」と思った本だった)
主人公は加賀野正吉、50歳。そこそこ売れている小説家。大学生で小説を書き始め、4年生の時に応募した文学賞で大賞を受賞してデビュー。週に1度ぐらい買い物や散髪、市役所や郵便局に出かける以外は、基本的に部屋でパソコンに向かって小説を書いている。
そんな「引きこもり」生活の加賀野への来客から物語が始まる。面白いので冒頭の来客のセリフを引用する。
「実の父親に言うのはおかしいけど、やっぱりはじめましてで、いいんだよね?」
加賀野には生まれてから25年間、一度も会ったことのない息子がいるのだ。名前は智(とも)。その息子が突然訪ねてきたのだ。加賀野はかつて合コンで出会った女性、美月と、酔った勢いで関係を持って子どもができた。二人で話し合って、結婚はしない、美月は産んで育てる、加賀野は養育費を送る、と決まった。それで加賀野は毎月10万円を20年間振り込み、美月は受取確認と智の写真を送り返してきた。
フリーターとしてコンビニで働いている智は「仕事先が近い」という理由で、加賀野の家に住むことになった。物語は、加賀野と智の二人の暮らしを描く。基本的に加賀野が智に振り回されるのだけれど、自治会の催しに参加したりして、そのおかげで少しずつ外の世界とつながりを持つようになる。
とても楽しめた。実は、智にはここにやってきた秘された理由があるのだけれど、それも含めて加賀野は孤立していたように見えて(両親とも28年会っていない)、支え手がちゃんとあったのだ。そういうところが心が温まる。
身近な人で永らく音信を絶えている人がいたら連絡してみよう。未来が少しよくなるかも(ならないかも)
人気ブログランキング「本・読書」ページへ
にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
(たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)