著 者:佐藤正午
出版社:岩波書店
出版日:2017年4月5日 第1刷 発行
評 価:☆☆☆(説明)
読んでいて「それでどうなるの?」と思い、読み終わって「これからどうなるの?」と思った本。
2017年上半期の直木賞受賞作。
主人公は小山内堅(つよし)。年齢は60すぎ。青森県八戸市に生まれて東京の私大を卒業後、石油の元売りの会社に就職。同郷の女性の梢と結婚し、娘の瑠璃が生まれ、まずまず順調な人生を送って来た。しかし、15年前に妻と娘を交通事故で亡くす。
物語は、小山内が二人連れの母娘と面会する場面から始まる。そこから、小山内の記憶を辿り、記憶の中の人物が語った物語をなぞり、面会相手の娘が語る8年前の事件に耳を傾け、と、時代と場所を変えて縦横に展開する。時系列が少し混乱するかもしれないけれど、それでもそれほど困ったことにはならない。
帯でも分かるのだけれど、本書のテーマは「生まれ変わり」だ。小山内が会っている母娘の娘の方の名前は「るり」という。小山内の亡くなった娘と同じ名前だ。るりは7歳なのに、8年前の事件のことを詳細に語る。生まれる前の記憶がある(としか考えられない)。実は、小山内の娘の瑠璃も、知るはずのない昔の歌謡曲を歌っていたことがあった。
正直に言うと戸惑いを感じた。「生まれ変わ」ってでも前世の続きを生きようというのは、強い想いがあるからで、この物語の場合はそれは「愛」。それほどの強い愛に感動する人もいるだろう。でも、私はそうならなかった。そうならなかった理由も分かっている。重大なネタバレになるので、ここには書かない。
最後に。「瑠璃も玻璃も照らせば光る」というフレーズは、意味も音もリズムもとても心地いい。
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