著 者:有川ひろ
出版社:KADOKAWA
出版日:2019年10月31日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
土佐弁でいう「はちきん」は、こういう人のことを言うのだろうな、と思った本。
私が大好きな有川ひろさんのエッセイ集。タイトルから分かるように、2016年に出たエッセイ「倒れるときは前のめり」の第2弾。ちなみに著者は2019年2月に「有川浩」から「有川ひろ」にペンネームを改めた。本書は単行本としては「有川ひろ」名の最初の作品。
収録されているのは、産経新聞大阪版、他の作家の書籍に書いた解説、著者のブログ「有川ひろと覚しき人の「読書は未来だ!」」の記事など、41本のエッセイと、特別収録小説として短編が2本。エッセイには「振り返って一言」という書きおろしコメントが付いている。
とても良かったことを2つ、良かったことを1つ、残念だったことを1つ。
とても良かったこと。1つ目は有川さんが書いた他の作家さんの書籍の解説。その本が無性に読みたくなった。紹介された本全部なのだけれど、特に「詩羽のいる街/山本弘」。「解説」は本の巻末が定位置だけれど、それ自身が「作品」であるし、独立させてまとめるとすごい宣伝になることが分かった。
2つ目は特別収録の短編2本。1本は「県庁おもてなし課」のサイドストーリー「サマーフェスタ」で、もう1本は「倒れるときは前のめり」に収録した「彼の本棚」と対になる「彼女の本棚」。特に「彼女の本棚」。「彼の本棚」は初出が2007年だから12年越しの物語の成就。シビレた。本好きはいらぬ妄想をしてしまいそう。
良かったこと。SNSの匿名性に起因するいろいろなことに、正面から立ち向かう有川さんの姿を知ったこと。そういう姿を気に入らない人もいるので、摩擦は大きい。しかしあくまで言葉を使って、議論をかみ合わせて主張を伝えようとする姿勢に心打たれた。
残念だったこと。「シアター!」の完結を現状で断念、と有川さんがおっしゃっていること。どういう経緯でここに至ったのか、私は知らないのだけれど、著者本人がそうおっしゃるなら、それを受け入れる。
最後に。共感することが多かったけれど、特に1つだけ紹介する。
「嫌いの主張ではなく、好きの主張を」(「嫌い」は誰かを傷つける呪詛となる。「好き」は誰かを傷つけない言祝ぎになる。呪詛ではなく言祝ぎが蔓延する世界を望む)
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