ムゲンのi(上)(下)

書影

著 者:知念実希人
出版社:双葉社
出版日:2019年9月22日 第1刷 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 本屋大賞ノミネート作品。

 読み終わると、思っていたところと全然違うところに着地している。そんな本。

 主人公は識名愛衣。神経精神研究所附属病院の神経内科の医師。「突発性嗜眠症候群、通称「イレス」の患者3人の主治医。イレスは世界でも400例ほどしか報告されていない疾患。普通に眠っていただけの者が、目を醒ますことなく昏睡に陥る奇病。その奇病が東京の西部で同時に4例発生、4人ともがこの病院に入院し、そのうち3人が愛衣の患者となった。

 愛衣には本人も知らなかった別の側面があった。愛衣の祖母は、かつては沖縄のユタで、不思議な力で探し物の場所を言い当てたり、病気を治したりしていたという。そして、その力は愛衣にも受け継がれているはずだ、というわけ。「不思議な力って、そんなものあるわけないじゃない」というのが、愛衣の最初の感想だったけれど、その力は実在した。

 というわけで、愛衣はユタの力を使って患者を治療する。患者の「夢幻の世界」に入り込んで、そこで「ククル」という生き物の導きで、患者の「マブイ」という魂のようなものを修復して取り戻さないといけない。「夢幻の世界」とは、患者が見ている「醒めない夢」のこと。「イレス」は、「マブイ」が傷つくことで強制的に仮死状態になった状態だったわけ。

 面白かった。愛衣がが勤める病院や実家の団らんなどの「現実パート」と、患者の夢幻の世界の「ファンタジーパート」、その中で明らかにされる事件の「ミステリーパート」。それから愛衣自身が抱える23年前の事件。そうした複数の要素が配合されている。私としてはちょっと「ファンタジーパート」が冗長なところがあるかな?と感じたけれど。

 最後に。「現実パート」の背景に、猟奇的な連続殺人事件が描かれている。同じく本屋大賞ノミネート作品の「medium 霊媒探偵城塚翡翠」もそうで、これは今年の本屋大賞の傾向なのかな?と思った。エグいのは好きじゃないんだけど..。

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