著 者:垣谷美雨
出版社:双葉社
出版日:2016年11月13日 第1刷 2020年1月29日 第29刷 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
「部屋の乱れは心の乱れ」いつもは頷けないこんな慣用句が「そうだよなぁ」と思えた本。
全体の主人公は大庭十萬里。50代の女性。外見は「顔も体も丸い普通のおばさん」。職業は「片づけ屋」。「あなたの片づけ手伝います」という本を出版した。本はいまいち売れてないけれど、一部に熱狂的ファンがいる。なんでも「部屋だけじゃなくて人生そのものを整理してくれる」らしい。
依頼すれば十萬里さんが訪問して、部屋の片づけを指導してくれる。評価が「重症」の場合は月に2回の指導が3か月続く。十萬里さんは、本当は情の細やかな面もあるんだけど、愛想を使ったりしない。「部屋が汚くて修理の人を呼べない」と言うクライアントに「一応、羞恥心てものもあるんですね」なんて言ったりする。
本書には4つの指導ケースが、それぞれのクライアントを主人公にして、100ページ前後の物語として収められている。クライアントは30代の女性会社員、60代の木魚職人の男性、300坪の豪邸に一人住まいの70代の女性、エリート官僚の妻の40代の女性。それぞれに「心の乱れ」につながる要因がある。不倫関係だとか、妻に先立たれたとか、子どもたちが縁遠くなったとか..。
面白かった。本当にありそうで面白かった。同じ「部屋が汚い」でも様々だ。単に片づけないから散らかってしまうということもあるけれど、ドンドンとモノを買って部屋にあふれてしまうとか、いつか要るかもしれないと思って捨てられないとか..すべてのケースで、ちゃんと「心の乱れ」を表す汚れ方をしている。
ホロッとくる。あからさまにではないけれど「愛」を感じる。十萬里さんに依頼するのは本人ではなくて親や義母や娘。そこに共通するのは親身な心配だ。「義母に「片づけ屋」を依頼されたらキツイだろうな」とは思ったけれど、このお義母さんもお嫁さんを信頼している。それぞれの物語の主人公は、愛されているのだ。
最後の物語は号泣した。涙腺の弱い方は人前で読まない方がいいと思う。
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