超訳 日本国憲法

著 者:池上彰
出版社:新潮社
出版日:2015年4月20日 発行 2109年3月30日 16刷
評 価:☆☆☆(説明)

 「そう言えば憲法ってちゃんと全文を通して読んだことなかったなぁ」と思って読んでみた本。

 池上彰さんが日本国憲法の条文を一つ一つ取り上げて、その意味するところ、背景や関連のニュースなどを解説してくれる。条文の言い回しが難しいものについては、読みやすい文章に「超訳」してある。例えば結婚について定めた第24条1項はこうなっている。

 <条文>婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

 <超訳>結婚は、男女二人の合意で成立する。他人が口を出すことはできない。夫婦は同じ権利を持っているのであり、お互いが協力して維持しなけれなならない。

 本書は著者の危機感が端緒になっている。本書発行の前年の2014年7月に「梅雨空に 九条守れの 女性デモ」という俳句が、公民館だよりへの掲載を拒否される。そして12月の総選挙で与党が議席数の3分の2を維持し、安倍首相は憲法改正への意欲を見せる。

 第99条には、国会議員や公務員は憲法の尊重と擁護の義務を負う、と明記されているにも関わらず、公務員が「憲法を守ろう」を拒否する矛盾、それを許してしまう世間の関心の薄さへの危機感。まずは国会議員と公務員、続いて国民が、憲法を知らなさすぎる。このことが、今日の憂いを招いた原因ではないか、と著者は考えた。

 私は、これまでに憲法を学ぶ機会が何度かあった。中学生の時、高校生の時..。通読したことはあったのかなかったのか?本書を読むことで通読して気が付いたことがある。「憲法って意外と読みやすい文章で書かれてる」ということ。例えば上に書いた第24条1項。本書の主旨としては、難しいから「超訳」しているのだけれど、「これ難しい?「超訳」必要?」と思う。他の条文はもっと読みやすい。

 一番よく取り上げられる9条が例外的に難しいのだ。いや9条も平易な言葉で書かれているのだけれど、文意に揺らぎがあるのだ。これは2項の冒頭にある「前項の目的を達するため」という文言のために生じている。この文言が挿入された経緯の解説があって、例外的に難しい9条も、私としてはスッキリと理解ができた。

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