風神秘抄

書影

著 者:荻原規子
出版社:徳間書店
出版日:2005年5月31日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 やっぱり荻原規子さんの和製ファンタジーはいいなぁ、と思った本。

 「空色勾玉」「白鳥異伝」「薄紅天女」の「勾玉」シリーズ3部作の流れをくむ作品。そしてもしかしたら「RDG レッドデータガール」につながるのかも?

 時代は平安時代の末期、保元・平治の乱を経て平家が権力の基盤を固めて頃。主人公は草十郎という16歳の少年。年若とはいえ、源氏の棟梁である源義朝の軍に加わる、立派な坂東武者だ。草十郎には誰にもまねのできない特技があった。それは笛で、彼が笛を吹くと、周囲の木々が共鳴し動物たちが集まってくる。

 もう一人、重要な人物がいる。美濃国の遊女の糸世。草十郎が初めて会った時には、彼女は死者の魂を鎮める舞を舞っていた。この二人の笛と舞が合わさると、人の運命を変えるほどの力があった。それ故に、平清盛や後白河上皇の権力闘争の渦中に巻き込まれ..。という物語。

 面白かった。まず、ストーリーのテンポと緩急がちょうどいい。600ページ近くある長い物語なのだけれど、ずっと続きが気になって読んでいた。

 次に、登場人物たちが粒ぞろいだ。草十郎と糸世の他にも個性的で好感が持てる人物がたくさん。瀕死の草十郎を拾った盗賊の正蔵、糸世を慕う山伏の日満、双子の童女のあとりとまひわ、上皇の警備要員でありながら草十郎と糸世に力を貸す幸徳..。中でも特筆すべきは「豊葦原(日本)を支配する」という鴉の鳥彦王。鳥彦王の先祖はたぶん「空色勾玉」の鳥彦だ。

 歴史上の出来事をストーリーに取り込んだファンタジー。あの出来事の裏には、本当にこういうことがあったのかも?と考えてみるも楽しい。

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