呪いの言葉の解きかた

著 者:上西充子
出版社:晶文社
出版日:2019年5月25日 初版 6月15日 2刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 この本を読んだことで、私も救われることがあるかもしれない、と思った本。

 著者の紹介から。著者は法政大学の教授で労働問題の研究者で、何度か国会で意見陳述もしている。この紹介で何も思い当たらなくても、国会での質疑と答弁を街頭で上映する「国会パブリックビューイング」の主宰者、といえば分かる方がいるかも?「ご飯論法」という用語の生みの親、といえば「へぇ~」と思う人がいるかもしれない。

 その著者が、2018年の通常国会での「働き方改革関連法案」の国会審議に関するツイートを積極的にする中で気が付いたことがある。「野党は反対ばかり」という野党への批判に対し、当の野党側から「賛成している法案の方が多い」という反論がされていることだ。ここは「こんなとんでもない法案に、なぜあなた方は賛成するんですか?」と返すべきだろう、と。

 つまり「反対ばかり」という言葉は、本質的な問題ではない「反対と賛成の割合がどの程度か」ということに、相手の思考の枠組みを縛る効果がある。これに「賛成もしている」と答えるのは、まんまと縛られてしまっている。著者はこの「相手の思考の枠組みを縛る言葉」を「呪いの言葉」と定義。それは相手を心理的な葛藤の中に押し込め、問題のある状態に閉じ込めてしまう。

 本書には「労働をめぐる」「ジェンダーをめぐる」「政治をめぐる」の3分類の「呪いの言葉」を論じている。例えば、労働環境の悪い会社で働く労働者にむけれらる「嫌なら辞めればいい」。この言葉は辞めずに文句を言う者に向けられている。「辞める」か「文句を言わずに働く」の二者択一の思考の枠組みに縛られている。「会社側が労働環境を改善する」が、正しい在り方であるのに。

 「呪いの言葉」→「解決策」の一問一答のようなものではない。少し文章を読み込まないと分からない。それは現実の問題解決の難しさを反映しているのだと思う。実際にはそんなに手軽に解決できない。(実は、本書の企画の元はTwitterの「#呪いの言葉の解き方」というハッシュタグで、そちらの方は一問一答に近い。「大喜利」風で簡単な分、浅薄に感じる)

 それでも、問題解決には遠くても、自分が「呪いの言葉に縛られている」と認識するだけで、袋小路からは脱出して救われることは多いだろう。

 一読をおススメ。ただし、著者の活動を反映した内容もある(多い)ので、「国会パブリックビューイング」や「ご飯論法」を不快に思う人は別。

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