著 者:阿川大樹
出版社:実業之日本社
出版日:2017年2月15日 初版第1刷 2018年6月30日 初版第27刷 発行
評 価:☆☆☆(説明)
終電を逃したあれこれの経験を思い出した本。
帯の「第1位」という文字が目について手に取ってみた。裏表紙の紹介を読んで面白そうなので読んだ。3巻までシリーズ化されていて「累計50万部突破!」だそうだ。
7編の短編が収録された短編集。主人公はそれぞれで、行きつけの店に寄って帰りの電車に乗った会社員、ムリ目な納期の開発案件に取り組む小さなIT企業のエンジニア、恋人の競輪選手の部屋に向かう女性、小料理屋で隣り合った客から実家の理髪店を褒められた男性、友人のアーティストのアトリエを訪ねてきたイラストレーターの女性、気分で学校を抜け出して公園で絵を描く女子高校生、駅売店の販売員一筋25年の女性。
主人公たちにも物語にもあまり共通点はない。あるのはK町という鉄道の駅と、その近辺で起きる電車事故が、ストーリーに関係していること。例えば、電車事故によって乗っている電車が停まってしまう。遅れたことがその後の出来事を変えるとか、終電がなくなって徒歩で帰ることにしたおかげで思わぬ展開になったとか。
もうひとつ共通点がある。主人公のとても個人的な問題に変化が起きること。世間的には何の影響も与えない、もっと言えば主人公にとっても、劇的に何かが変わるわけでもない。それでも確実な「変化」がそこにある。だから読んでホッとする。「よかったね」と思う。私たちの生活はそんな「よかったね」が積み重ねられれば幸せなのだと思う。
タイトルから「終電には神様が乗っていて、弱っている人を助けてくれる」という話かと思っていたが違った。いや、直接はそう描いてないだけでやっぱりそうなのかも?
最後に。帯の「第1位」は「実業之日本社文庫2017年 年間売上」という、いわば「当社比較」の1位だった。「こういうランキングでもウリになるのか」と思った。私はそれで買ったわけだから効果テキメンなのだけれど。
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