著 者:太田愛
出版社:KADOKAWA
出版日:2017年2月18日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
ある方からおススメいただいて読んだ。薦めてくださった理由が、読み終わったらよく分かった本。
主人公は、興信所の所長の鑓水七雄と、所員の繁藤修司、鑓水の友人で刑事の相馬亮介の3人。物語の発端はとても奇妙な事件だった。渋谷駅前のスクランブル交差点で歩行者用の信号が赤に変わって、無人であるべきその真ん中で、ひとりの老人が絶命した。死の直前、老人は何もない青空を指さしていた。それは正午ちょうどの出来事で、ニュースの冒頭の街のライブ映像として全国に放映された。
老人の名前は正光秀雄と分かった。四日後「正光秀雄が、最期に何を指さしたか突き止めて下さい」と、鑓水の興信所にこれまた奇妙な依頼が来る。期限は二週間、報酬は一千万円。依頼者は明示されなかったけれど、鑓水たちと因縁のある元与党の重鎮の政治家らしい。
鑓水はこの依頼を受ける。物語はこの後、公安部からの依頼で失踪した警察官の捜索をしていた相馬と鑓水たちが合流して、大波が繰り返して奔流のように進む。そして、事件の背後にはとても大きな権力が動いていることが、徐々に明らかになる。
とても面白かった。上下巻で800ページぐらいあるけれど、飽くことなく読めた。実は読んでいる最中は、叙述が少し詳しすぎる気がした部分があるのだけれど、あの詳しさにも意味があったのだと思える。途中で舞台が東京から瀬戸内の島に飛んで、脳裏に浮かぶ風景がガラッと変わるのも、飽きない要因として生きた。そして何よりも、本書のテーマは私が長く興味を抱えていたものだった。薦めてくださったのもそれが理由だろう。
ネタバレになるので詳しくは書かないけれど、この本に書かれているのは「権力と報道」、もう少し広げると「権力と民主主義」のことだ。私が抱えている興味というのもそれだ。薦めていただいた当時にも「新聞記者・桐生悠々忖度ニッポンを「嗤う」」という本の感想を書いていた。本書はフィクションだけれど、これがノンフィクションでも驚かない社会に、私たちは生きていると思う。
いくつも刺さるセリフがあったけれど一番を..
闘えるのは火が小さなうちだけです
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