終電の神様 始発のアフターファイブ

著 者:阿川大樹
出版社:実業之日本社
出版日:2018年10月15日 初版第1刷 発行
評 価:☆☆☆(説明)

 「始発で帰る」ということが、かつては私にもあったなぁ、と思った本。

 「終電の神様」の第2巻。5つの短編を収録した短編集。

 サブタイトルの「始発のアフターファイブ」は、冒頭の短編のタイトルでもある。主人公は清水荘二郎、60歳。歌舞伎町のラブホテルのルームメイクの仕事をしている。遅出の勤務は深夜1時から3時半まで。終電で出勤して、終業後はカフェで時間をつぶして始発で帰る。始発は5時台。「アフターファイブ」が「仕事帰り」を意味するなら、荘二郎にとって始発は二重の意味でまさに「アフターファイブ」。

 残り4編のタイトルと主人公を短く紹介。「スタンド・バイ・ミー」の岩谷ロコは、歌手になるべくストリートデビューするために、昨日岩手県から出てきた。「初心者歓迎、経験一切不問」の志村加奈は、通っている食堂で茜と知り合うが、その茜の顔をしばらく見ていない。

 「夜の家族」の沢木健太は、派遣型風俗、通称デリバリーヘルスの運転手をしている。「終電の女王」は舞台が中央線(いや「中央本線」)。主人公はシステムエンジニアの会田和也で、数年前に分かれた彼女から深夜1時過ぎに電話があった。どうやら電車を乗り過ごしたらしい。

 残りの4編も「始発のアフターファイブ」と同じで、深夜から明け方の時間帯の物語。「終電の女王」以外の3編は舞台も同じで歌舞伎町近辺だ。知っている人はよく分かると思うし、知らない人でも想像できると思うけれど、歌舞伎町にはこの時間帯にも人がたくさんいる。働いている人となれば、いろんな事情を抱えていて、人の数だけドラマがありそう。本書は、そんなドラマを拾い上げて、少し心温まる物語として丁寧に描く。

 どの物語もよかった。一番は「スタンド・バイ・ミー」。

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