著 者:高田郁
出版社:角川春樹事務所
出版日:2016年2月18日 第1刷 2018年12月18日 第14刷 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
「次を読みたいな」と思った本。
「みをつくし料理帖」シリーズの著者による、新シリーズ(と言ってもすでに9巻が既刊)。「みをつくし~」がよかったのでこちらも読んでみた。
主人公は幸(さち)。物語の始めは7歳で、西宮の東隣の津門村の私塾の娘だった。時代は享保16年(1731年)。享保の大飢饉の直前。当時は「女子(おなご)に学は要らん」という風潮もあったが、塾の主宰者である父は「せめて読み書きだけは、男女問わずにも学ばせるべきだ」と考え、幸にも学ばせていた。
物語はこの後、幸を優しく導いてくれた兄の死を経て、大坂の商家に奉公に出た幸の13歳までを描く。奉公に出た商家は中堅の呉服商「五鈴屋」で、四代目の店主と弟2人とその祖母が、奉公人たちを使って店を切り回していた。理想的とはいかないけれど、まずまずの良い奉公先で、特に店主の末弟の智蔵と番頭の治兵衛は、幼い女子の幸の才に気づいて、何かと目をかけてくれる。
シリーズの第1巻だから「まだまだこれから」という感じ。でも「これから」が期待できる始まり方だった。幸の父は「商とは、すなわち詐(いつわり)なのだ」という人で、その言葉は幸の胸に楔のように刺さる。その幸が商家でその才のつぼみを膨らませる。否が応でもそれが花開くところを見たいと思わせる。
また、物語が始まってすぐの、幸が兄と見た夕暮れの武庫川の景色が印象的だった。兄は金も銀も見たことのない幸に「夕日の輝き」を金色、「川面の煌びやかな色」を銀色、と教える。そういえば本書は「源流篇」。人生を川の流れに例えている。物語の中では、治兵衛が商いを川に例えるシーンがある。「川の流れ」は、この物語の重要なエレメントなのかもしれない。
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