著 者:青山美智子
出版社:ポプラ社
出版日:2020年11月9日 第1刷 2021年1月24日 第6刷
評 価:☆☆☆☆(説明)
「こんな図書室は居心地がいいだろうなぁ」と思った本。
本屋大賞ノミネート作品。
舞台は、小学校に併設された区民のための施設「羽鳥コミュニティハウス」。全部で5章あって、それぞれ主人公が違う。婦人服販売員の朋香は21歳、家具メーカーの経理部に勤める諒は35歳、元雑誌編集者の夏美は40歳、ニートの浩弥は30歳、会社を定年退職した正雄は65歳。年代も職業もバラバラだ。
「羽鳥コミュニティハウス」には図書室がある。地域住民のための施設の中とは言え蔵書は充実していて、専門の司書を置いたレファレンスコーナーがある「ちゃんとした図書室」だ。司書は小町さゆりさん。肌の白いはちきれそうな体をした「マシュマロマン」のような人..。
「何をお探し?」小町さんは、レファレンスコーナーに来た人に決まってそう声をかける。もちろん「どんな本を探しているのか?」という意味のはずだけれど、主人公たちは一瞬「私が探しているのは..」と、暮らしの中で求めていることに思いを馳せる。例えば、婦人服販売員の朋香は「仕事をする目的とか、自分に何ができるのかとか..」と。
気持ちが楽になるような物語だった。主人公たちは、それぞれ日常に悩みを抱えている。深刻なものではなくて、「そのくらいの悩みは誰にもあるよ」というものではあるけれど、気持ちは晴れない。「誰にもある」からこそ、その悩みに読者は共感を感じる。司書の小町さんが選んだ思いもよらない本が、その気持ちを少し晴らしてくれるきっかけになる。私の気持ちも少し晴らしてくれた。
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