Seven Stories 星が流れた夜の車窓から

書影

著 者:井上荒野、恩田陸、三浦しをん、糸井重里、小山薫堂、川上弘美、桜木紫乃
出版社:文藝春秋
出版日:2020年11月25日 第1刷
評 価:☆☆☆(説明)

 旅行気分とドラマを一緒に味わえた本。

 JR九州の豪華寝台列車「ななつ星」をテーマとした7つの文章。井上荒野、恩田陸、三浦しをん、糸井重里、小山薫堂、川上弘美、桜木紫乃、の人気作家7人の贅沢なアンソロジー。

 井上荒野さんの「さよなら、波瑠」は、60歳を越えて知り合って結婚した男女の男性が女性を見守る話。女性がカッコよくて切ない。恩田陸さんの「ムーン・リヴァー」は、壮年となった兄弟による、育ての親の叔母が残した言葉の謎解き。男の兄弟が子どもっぽい。三浦しをんさんの「夢の旅路」は、60年来の親友である女性の二人旅。なぜだろう?男性にはこういう旅はできない。

 糸井重里さんの「帰るところがあるから、旅人になれる」と、小山薫堂さんの「旅する日本語」は、随筆と随想。物語の間に挟むことで、読者はここで気持ちが切り替わる。糸井さんの随筆は「ななつ星」が博多駅を出て博多駅に帰ってくることに着想を得て。小山さんの随想はたったの7つの言葉を紹介するだけ。でも「日本語には、こんな美しい言葉があったのか!」と思った。

 川上弘美さんの「アクティビティーは太極拳」は、旅が新型コロナで中止になってしまった母娘によるバーチャルツアー。思いのほか母と娘の中が深まる。旅に行かなかったこの話が、他のどの物語よりも「ななつ星」の旅の紹介にしっかりなっていたのが何とも皮肉。

 桜木紫乃さんの「ほら、みて」は、市役所を退職した夫とその妻の旅行。妻は、5年前にひとり息子が就職してからの計画を実行するつもりでいる。今年58歳になる私としては、同年代の夫婦に強くおススメする。

 それなりの時間を過ごした夫婦が知っておくといいことが書いてある(と思う)。女性の側からみたことは想像するしかないけれど、男性が抱える心根はこの通りだと思う。心配を押し隠していた正雄さんに共感。

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