京都府警あやかし課の事件簿2 祇園祭の奇跡

書影

著 者:天花寺さやか
出版社:PHP研究所
出版日:2019年5月22日 第1版第1刷 2020年3月11日 第5刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 祇園祭の宵山は物語の舞台にうってつけだなぁ、と改めて思った本。

 「京都府警あやかし課」の活躍を描く第2弾。「あやかし課」というのは警察の一組織で、鬼とか化け猫とかの「人ならぬ者たち」が起こす事件の処理をしている。主人公は、そこの新人隊員の古賀大(まさる)。20代の小柄な女性。大は、京都御苑の鬼門に祀られる神猿に授けられた「魔除けの力」を持っている。

 今回は4つの事件が起きる。化け猫が平安時代から千年を生きて、探しも求めてきた「鬼笛」を巡るもの。失恋の痛手から自殺未遂を起こした女性、憤怒のあまり真っ黒な生霊となってしまう話。祇園祭の宵山での迷子。その夜に妊婦さんが産気づいた件。

 「事件」と言うと物騒な出来事を想像しがちだし、大は剣士の「まさる」に変身して太刀を振ったり、先輩の塔太郎は竜に変身して戦ったりするのだけれど、そうした大立ち回りは今回は「鬼笛」の一件だけ。これはとても迫力があった「強力な敵の出現」といった感じ。

 失恋から生霊となってしまった話は、それはそれで怖かったけれど、どちらかというとこれも人情噺。宵山の「迷子」の話はユーモアがあるし、妊婦さんの話は感動した。読んでいて涙がにじんだ。

 こういう物語が好きだ。塔太郎のことで、今後の展開につながりそうなことも明かされていて、この後も楽しみだ。

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