三つ編み

著 者:レティシア・コロンバニ 訳:齋藤可津子
出版社:早川書房
出版日:2019年4月25日 初版 7月10日 4版 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

「最近読んだ本で何かおススメは?」と聞かれたら、これをおススメしようと思った本。

本書は、フランスで2017年に出版され大ベストセラーとなり、世界32か国で翻訳されているという。日本の出版社のサイトに「フランスで120万部突破、日本でも続々重版」という記事が掲載されたのが2019年4月。日本の様々な書評でも絶賛されている。

主人公は世界の3大陸にそれぞれ暮らす3人の女性。インド・ウッタル・プラデーシュ州に暮らすスミタには6歳の娘がいる。イタリア・シチリアに暮らすジュリアは20歳。父親が経営するヘアピースやかつらを作る工房で働いている。カナダ・モントリオールのサラは40歳。法律事務所のアソシエイト弁護士。3人は住む大陸だけではなく年代も境遇も違うが、タイトルの「三つ編み」は、この3人の物語がどこかで縒り合さることを予感させる。

境遇のことで言えば、三人三様ながらそれぞれに厳しい試練を迎えていた。しかしスミタのそれは、他の2人とは次元が異なる過酷なものだ。スミタは最下層身分の「不可触民」で、他人の糞便を素手で拾い集める仕事をしている。もし何か不手際があれば、命の危険さえある虐げられた人々だ。そのスミタはこの境遇から娘を救い出すために、引き返すことのできないある行動に出る。

読んで主人公たちのしなやかな力強さに深い感銘を感じた。3人の物語が順に繰り返され並行して進むのだけれど、スミタの物語になる度にページを繰る手が止まって、胸に痛みを感じる。読み進むうちにサラの物語でも。ジュリアの物語ではそうならないのは、ジュニアには寄り添ってくれる人がいたからだろうか?

本書は「フェミニズム小説」と称されていて、「女性の物語」であることは明らかだ。女性の読者は主人公を自分と重ねて読む人もいるのだろう。男性である私にはそれはできないけれど、世の理不尽を感じながら私も暮らしているので共感はできる。それに、自分の妻や娘や友人を思うこともできる。そうして深い感銘を感じた。

最後に。覚えておきたい言葉を引用。

鏡にうつる自分の姿は敵ではなく、味方でなくてはならない

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