21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由

書影

著 者:佐宗邦威
出版社:クロスメディア・パブリッシング
出版日:2015年9月1日
評 価:☆☆☆☆(説明)

 紙に書いて貼っておきたいことがたくさん載っていた本。こういうの好きです。

 本書は、ビジネスにおける「デザイン思考」の重要性を説いて、その実践方法を著者自身の経験から指南する。

 著者は、P&G社に入社しマーケターとしてデータ分析などの「MBA的」なビジネス術を身につけた後、「市場のルールを変えてしまうようなイノベーションを起こせる一流のマーケターになりたい」と思うようになり「デザイン思考」にたどり着く。そしてイリノイ工科大学デザインスクール(ID)で学ぶ。本書の多くはそのIDでのメソッドや著者の経験が披露されている。

 「デザイン思考」が何を指すのか?は、もうそれは前提知識なのか、明確な定義がされることなく本書の中で使われている。まぁ簡潔な定義を示す代わりに、本書の全部を使ってそれを語っている、とも言える。

 私なりに「こういうことか」と思ったことを2つ紹介する。1つ目は、著者の経歴の紹介で使った「MBA的」との対比だ。MBAは論理的思考をベースにした「ビジネスをより効率的にするやり方」を教える。対してデザインは、今までの延長線上にはない「まったく新しい事業、商品などを創るやり方」を教える。(と言っても今やMBAコースでデザインを取り入れるビジネススクールは多いらしい)

 2つ目。「デザイン思考」の「1丁目1番地」は「デザイナーの思考法」だという。これだけでは言葉を分解しただけのようでよく分からないので補足すると、重要なのはリサーチもアイデアもビジュアル情報で捉えること。著者の説明によると、リサーチのために訪問調査をすると、200~300枚も写真を撮ることも普通らしい。アイデアはイラストにしたり、ポストイットを使ってビジュアル化する。

 「デザイナーの思考」のその他には例えば、「振れ幅の大きい世界に触れる」例えばユーザーリサーチをするなら極端な好みを持ったユーザーを敢えて選ぶ。あるいは「アナロジー思考」とツールとしての「比喩」自分が取り組んでいるテーマを、全然別のもので例えて置き換える」など。意図していなかった繋がりや共通点が見えて「思考のジャンプ」につながる。

 一流のデザインファーム出身の優秀なデザイナーの共通点、がとても印象に残った。彼らは自分のアイデアのプレゼンを「私が解決したい課題は...(the problem I would like to solve is..)という言葉で始めるらしい。優秀なデザイナーは「課題解決」を自分の仕事として捉えているということ。まねして使いたい。

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