News Diet(ニュース ダイエット)

書影

著 者:ロルフ・ドベリ 訳:安原実津
出版社:サンマーク出版
出版日:2021年2月20日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

とても意外な指摘だったけれど、少し前から思っていたことと重なることもあった本。

著者の主張または提案は次のとおり。「生活からニュースを絶とう」。新聞を購読しない、テレビのニュースも見ない、ラジオのニュースも聞かない、ネットニュースに浸らない。そうすれば人生の質が向上し、思考は明晰になり、貴重な洞察が得られ、いらいらすることが減って、決断の質が上がり、時間の余裕ができる。そして信じられないかもしれないけれど、大事な情報を逃すこともない。

そんなバカな、と思った人も多いだろう。私もそうだ。善き市民として暮らし的確な判断をするためには、ニュースを見たり読んだり聞いたりして、世の中のことを知る必要がある。長い間そう思ってきた。しかし、そんな私でも、本書に書いてあることには反論の余地なしだ。(心から納得したかというと、そうでもないけれど)

ここまでの紹介でだぶん誤解があると思うので、1つ大事なことを。著者はニュースの対極に位置するものとして「新聞や雑誌の長文記事、エッセー、特集記事、ルポルタージュ、ドキュメンタリー番組、本」を挙げている。著者が絶とうと言っているのは、その日の出来事を短く報じる「最新情報」的なニュースのことだと分かる。決してジャーナリズムを否定したり、世の中の出来事を知らなくていいと言ったりしているわけではない。

そんな(最新情報としての)ニュースを絶った方がいい理由を、たくさん紹介している。一番分かりやすいのは「能力の輪」の例えによる説明だ。人は誰でも能力の限界という境界があって、その境界の外にある事柄には関与できないし対応もできない。どこかの国の大統領がバカなことをツイートしたと知っても、あなたにできることはない。そう考えると、ニュースの99%は、あなたとは無関係だというわけ。

もうひとつ。著者は現状を「日々のニュースの食べ放題」と言う。ニュースは「一口サイズのごちそう」で、砂糖のように食欲をそそり、消化もしやすいが、(摂りすぎると)きわめて有害でもあると(この意味でタイトルにある「ダイエット」は適確な表現だ)。例えば複雑な出来事を単純にしてしまうとか、ニュースが「思考」を妨げるとか、長い文章が読めなくなるとか。このことはこれからもニュースを見るとしても、心にとめておきたいと思う。

もちろんいくつか反論を思いつく。著者はそういったことの多くに先回りして用意をしている。反論を思いついた人は読んでみるといいと思う。もちろん「ニュースを絶った方がいい」と思った人も、ニュースダイエットのおだやかな始め方が書いているので参考にするといいと思う。

 

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