いちばん親切な 西洋美術史

著 者:池上英洋、川口清香、荒井咲紀
出版社:新星出版社
出版日:2016年7月25日 初版発行
評 価:☆☆☆(説明)

 「好き」なだけじゃなくて「詳しく知りたい」と思って読んだ本。

 本書は西洋美術の様式や時代区分、ジャンルや技法などを、時代を追って紹介する。様式や時代区分として「エジプト・メソポタミア」から始まって、「エーゲ文明・ギリシャ」「ロマネスク・ゴシック」「ルネサンス」「バロック」「印象派」などがあって、最後は「現代美術」で全部で17個の分類がある。

 それぞれの分類に対して2個から10個の、全部で100近くの項目がある。例えば「ルネサンス」なら「ボッティチェリ」「ダ・ヴィンチ」「ラファエッロ」「ミケランジェロ」など、芸術家の名前を含む項目名が多いけれど、「ロマネスク・ゴシック」では「柱頭彫刻」「ステンドグラス」「修道院と写本」といった「モノ」が項目名になっていて、柔軟な感じだ。

 各項目は見開き2ページに収められていて読みやすい。私は1ページから順に読んだけれど、興味のあるところを読むのでも支障はないと思う。日本で人気が高く、私も大好きな(それ故に少しは知識もある)「印象派」の分類が「モネの実験」「ジャポニズム」「ルノワール」の3項目とコラムしかないのは意外だったけれど、エジプトから始まる西洋美術の中では、妥当な分量なのだろう。

 私は美術展によく足を運ぶ方だと思う。以前に「絵を見る技術」という本を読んだときに改めて認識したことだけれど、美術展で「何か見逃してきたんじゃないか?」という気持ちがあって、それでこんな本に興味が湧いて読んでみた。(同じ理由で「東京藝大で教わる西洋美術の見かた」も読んでみたいと思っている)

 5000年の美術の歴史、「絵画」に限って言えば2000年分ぐらいを、順に観る機会を得て感じたことがある。揺り戻しはあるけれど、基本的には「制約からの解放」が繰り返されていることだ。今では当たり前の風俗画や風景画、静物画は、長く「宗教」と「人物」という制約があって、17世紀ぐらいまでは「あり得なかった」。

 他には「印象派」は、当時としては斬新すぎるモネの作品「印象、日の出」を、批評家が皮肉った呼び名だった、ということは有名な話。そして現代。様々な制約から自由になった。なにかこう「糸の切れた凧」を思い浮かべてしまった。

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