デュラス×ミッテラン対談集 パリ6区デュパン街の郵便局

著 者:マルグリッド・デュラス、フランソワ・ミッテラン 訳:坂本佳子
出版社:未來社
出版日:2020年3月31日 初版第1刷 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

人格は経験によって造られるのだなぁと思った本。

友達がこの本を紹介したのを読んで、興味が湧いたので読んでみた。

フランソワ・ミッテランとマルグリッド・デュラスの対談集。ミッテランは1981年から1995年までの二期務めた元フランス大統領。50代より上の世代なら知っている人も多いはず。デュラスはフランスの作家。デュラスの名前は知らなくても、「愛人/ラマン」という1984年発表の世界的大ベストセラーになった著書は知っている人がいるかもしれない。

二人に対するこの説明で思い浮かべるであろう「一線を退いた政治家と昔のベストセラー作家の対談」という評は2つの意味で間違っている。1つめ。この対談は1985年と翌1986年に5回に分けて行われた。つまり二人とも、現役の大統領でありベストセラー作家であったときの対談であること。2つめ。二人は第二次世界大戦中のレジスタンス運動の同志で幾度も共に死線をくぐってきた間柄。政治家と作家という以上の結びつきがある。

話題は、戦時中の話から始まる。デュラスの義妹のアパートがゲシュタポに踏み込まれ、すぐ近くにいたミッテランとデュラスは間一髪で逃げおおせたが、デュラスの夫と義妹は逮捕され収容所に送られてしまう。その悲劇的な出来事があったアパートの下に「デュパン街の郵便局」はある。本書のタイトルには強烈な意味があるのだ。

他にフランス国内の選挙と政治の話、人種差別の話、安全保障の話、ミッテランが毎年のように出かけたアフリカの話、アメリカとロナルド・レーガンの話,,話題は多岐にわたり、デュラスがミッテランに聞く、ということが多い。友人でありながらその問いかけは、いい加減な答え方を許さない。

正直に言って、私の暮らしに直結する話題は皆無だ。それでも食い入るように読んでしまった。なぜなのか?考えても「これだ」という答えには、未だたどり着かないのだけれど、二人の「言葉の重み」を、特に近年の政治家の言葉からは感じたことのない重み、を感じたことは確かだ。

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