心配事の9割は起こらない

著 者:枡野俊明
出版社:三笠書房
出版日:2013年9月5日 第1刷 9月30日 第6刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 タイトルを見て、まぁ心配事をわざわざ作り出してることあるよな、と思った本。

 著者は禅僧で、立場上たくさんの人から不安や悩み、迷いといった相談を受ける。そのほとんどが実は「妄想」「思い込み」「勘違い」「取り越し苦労」にすぎない、という。客観的に見れば「なんでもないこと」に振り回されてしまっていることが多い。本書のタイトル「心配事の9割は起こらない」はそういう意味。

 これだけ読んで「確かにそうだな」と思える人は、本書を読まなくていいと思う。「そんなことない」と思う人の方が、本書を読んでいいことがあるかもしれない。

 本書は5章建て。第1章「さっさと減らそう、手放そう、忘れよう」、第2章「「いま」できることだけに集中する」、第3章「「競争」から一歩離れると、うまくいく」、第4章「人間関係が驚くほどラクになるヒント」、第5章「「悩み方」を変えると、人生は好転する」。各章に10個前後の項目があって、禅の教えがちりばめられている。

 例えば「感情に逆らわない」の項目では、「雲無心にして岫を出ず」という禅語を紹介。雲は無心で「なにものにもとらわれず、風が吹くままに形を変える」という意味。とはいえ、イライラしたりクヨクヨしたりする気持ちは抑えられなず「無心」になるのは難しい。

 だから、喜怒哀楽の感情をなんとかしようとするのでなく「浮かぶに任せ、消えるに任せる」。それが「無心」に近い心のありようだと言う。「無心」にはなれなくとも、近づくことならできる。「近づくだけでいいんだ」と思ったら気が楽になった。

 もう一つ「若い人に任せる」の項目では「閑古錘」という禅語。これは、古びて先が丸くなった錐のこと。穴を開ける役割には使い勝手が悪いけれど、人を傷つけることがないし、なんとも言えない趣、風情がある。年を重ねて鋭さがなくなっても果たせる役割がある。定年間際の私には優しい言葉だと思った。「閑古錘」のような生き方を目指したい。

 最後に。たくさんある項目の中には、どうにも受け入れがたいものもある。聞き飽きたような説教臭いものもある。そういうものは、あるに任せて囚われないで、「これはいいな」と思うものを1つか2つ見つけられれば良し。そんな心持ちで読むといいと思う。

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