著 者:メリッサ・ダ・コスタ 訳:山本知子
出版社:講談社
出版日:2025年9月16日 第1刷 2026年4月9日 第4刷 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
2026年の本屋大賞 翻訳小説部門 第1位受賞作
読み終わって「考えられる限り最高の終わり方だ」と思った本
主人公はエミル、フランス中部のロアンヌに住む26歳の青年。若年性アルツハイマー病と診断され、余命は長くても約2年と告げられる。家族や友人の同情や、優しさにさえ耐えられない思いがして、家を離れてキャンピングカーで人生最後の旅に出ることを決意する。
彼はネットの掲示板に「人生最後の旅を一緒にしてくれる人を探しています」という募集を出して、旅の同行者を募る。それに応えたのがジョアンヌ。29歳の女性でフランス北西部のサン・シュリアックからはるばると来るという。
物語は、こうして始まったエミルとジョアンヌの、キャンピングカーでのピレネー地方への旅を描く。ジョアンヌは最初は自分のことをほとんど話さないが、旅が進むにつれて少しずつ、彼女も心に深い傷を持つことが分かってくる。それに合わせるように、エミルの症状が進行していく...
切ない。私の身近にはエミルと同様の病の人はいないけれど、想像するだけで切ない。もし、エミルと重ねてしまう身近な人がいたら、いたたまれないかもしれない。また、エミルの家族にしてみれば、最愛の家族が突然いなくなったわけで、その心中は推し量ることもできない。
一番印象に残っているのは、ジョアンヌがエミルにケーキの味わい方を教えるシーン。「今、ここ」に五感を集中させることで、ひとかけのケーキを食べることが、こんなにも多幸感にあふれるとは…
エミルは本当にすばらしい旅の伴侶を得たと思う。それは、残される家族にとってもそうだった。そのことで、私にとっても、この切ない物語を読んだことが救いに満ちた経験となった。
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