神の蝶、舞う果て

書影

著 者:上橋菜穂子
出版社:講談社
出版日:2026年1月20日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

肌に馴染んだ部屋着のような心地よさを感じた本

物語の舞台はラシュラン国という架空の国、主人公は16歳の少年のジェード。聖域である「闇の大井戸」の底から舞い上がってくる「聖なる蝶」を守って、それを襲う「蝶の影」という魔物を退治する「降魔士」。降魔士は必ず男女のペアで仕事をしていて、ジェードのペアはルクラン。

しかしルクランは「聖なる蝶」が舞い上がってくる予兆である「鬼火」に吸い寄せられて意識が遠のいてしまう。つまり、聖なる蝶を守ることができない。これまで1匹の魔物も退治したことがない。

物語は、ジェードとルクランを中心に、仲間の降魔士たちや、上役でもある神官たちとの関係を軸に、未曾有の事態に襲われたラシュラン国を描く。降魔士としては役に立たないルクランには、他の人に代えられない役割があった。

上橋菜穂子さんの作品は、人間の営みだけを見ていてはわからない、他の動物や植物など多様な生物との複雑な関係からなる、世界の成り立ちを描く。

「聖なる蝶」は、ラシュラン人の大切な糧である「ラムラー」という植物の受粉に欠かせない。故にそれを襲う「蝶の影」は退治すべき魔物なのだけれど、本当に「蝶の影」は悪なのか?その存在には何か大事な意味があるのではないのか?そんな問いが、この物語の背骨になっている。

本書を読んでいて、味で言えば「あっさり」な感じがした。著者の作品で言うと「狐笛のかなた」の頃のような。シリーズや上下巻が多い中で、本書も「狐笛のかなた」も単巻であるし、ページ数的なことがそう思わせるのかな?と思っていた

そうしたら「あとがき」に、この物語は1999年から2001年に執筆したものを、20数年後に「あの頃の勢いと輝きを消さないよう」必要最小限の修正をしたものだと書いてあった。「狐笛のかなた」の出版は2003年。もしかして、私の感覚もなかなか鋭いのか???

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