遺言 日本の未来へ

書影

編  集:日経ビジネス
出版社:日経BP社
出版日:2015年8月17日 第1版第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 出版社の日経BP社さまから献本していただきました。感謝。

 本書に添付されていたリリース文に「戦後70年、日本の安全保障のあり方が大きく転換しようかという今、第二次世界大戦下の日本を直接知る先達に、戦争とは何だったのか、戦後復興、高度経済成長とはどんな時代だったのかを語ってもらうことは、極めて意味のあることでしょう」とある。

 この主旨に則って、本書は、政財界、文化界などの重鎮、77歳から100歳までの31人から聞き取った言葉を収録したもの。そこで語られているのは、上に書いた主旨のとおりに、先の戦争から高度経済成長あたりまでの体験。今、記録しておかなければ早晩失われてしまうものだ。(31人はAmazonリンクの先に一覧があります)

 本書を読んでいる間中、二つの気持ちの間で揺れていた。否定的な気持ちと、そうではいけないと思う気持ち。多くの方が「終戦の時は○年生でした」ということからはじめて、自分の体験を語る。戦後の悲惨さを語り、自分たち世代の頑張りを語り、今の世の中を憂いの眼差しで語る。「それで何?」という投げやりな気持ちが頭をもたげる。

 「遺言」「日本の未来へ」というタイトルから、これは以降の世代へのメッセージだと思っていた。ところがほとんどの方は「自分語り」に終始している。「重鎮」に聞いているので、どうしても最後には上手く行った話に偏って、いわゆる「生存バイアス」もかかる。「(今の人は)与えられることに慣れ過ぎている」なんて言われても、言われた方はどうしようもない。「それで何?どうしろって言うの」

 そして「いや、ここから何かを読み取らねば」という気持ちも涌いていた。「これは「老害」だよな」と思うこともあったけれど、それも含めて、何を受け取るかは私たち次第なのだと思った。この期に及んで「分かりやすくストレートなメッセージ」を望んでは、それこそ「重鎮」たちに笑われてしまう。

 もちろん「分かりやすくストレートなメッセージ」もあった。脚本家の倉本聰さん。1935年生まれの80歳。一言で言えば「右肩上がりの考え方を改めよう」ということだった。自然界には右肩上がりのものはない、毎年同じ量しか生み出せない。「右肩上がり」は、自然の摂理と矛盾している。ここ最近、私が考えていたことと重なった。

 最後に。「重鎮」たちのお一人の堀場製作所最高顧問の堀場雅夫さんは、本書のインタビューの後、今年の7月14日に90歳でご逝去された。合掌。

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