福井モデル 未来は地方から始まる

著 者:藤吉雅春
出版社:文藝春秋
出版日:2015年4月20日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 知り合いがFacebookで紹介していて、興味があったので手に取ってみた。

 本書は「都市再生」のモデルを、富山県と福井県での取り組みに求めたルポ。前提として「地方消滅」の「消滅可能性都市」が象徴する「地方の衰退・破壊」と、そんな中で北陸三県の「幸福度」が高いという評価がある。2011年の法政大学等の調査によると、都道府県幸福度ランキングでは、1位福井県、2位富山県、3位石川県となっている。

 まずは富山市の事例。国内ではあまり知られていない事実だけれど、富山市は世界中から注目を浴びているらしい。講演の要請で、市長は世界中から引っ張りだこなのだという。理由は、OECDの「コンパクトシティ政策報告書」で、「世界の先進五都市」として評価されたからだ。

 本書には富山市の「コンパクトシティ構想」が、詳細に紹介されている。この施策が成功しているのは、市長の決断力と実行力の賜物だ。私は行政関連の仕事をしている。だから、こういうことは「行政が一番苦手としている」ことが分かる。ただ「行政にしかできない」ことでもある。

 次は福井県鯖江市の事例。鯖江市はメガネの産地として知られる。眼鏡フレームの国内シェア96%を占める。ただし90年代以降に中国の台頭により大打撃を受け、出荷額はピーク時の半分以下まで激減した。「日本でもっとも早く中国にやられた町」が、今、注目を集めている。

 鯖江市の場合は、富山市のように市長がけん引する形ではなく、「仕組み」や「市民性」がうまく回しているようだ。例えば福井県は人口当たりの社長の数が全国一位。鯖江ではクラスで「お父さんの職業は?」と聞いたら、ほぼ全員が「社長」と答えた、という話があるぐらいだ。

 最後に。「地方消滅」の関連で言えば、鯖江市は人口が増加し続けている。これ一つとってもとても興味深いことだと思う。「地方都市の再生」に関心がある人には一読をおススメする。

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