著 者:小保方晴子
出版社:講談社
出版日:2016年1月28日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
初版5万部の発売直後に書店で売り切れが続出し、Amazonでも「在庫なし」になっていた。なんとか初版を入手できたのでさっそく読んでみた。
本書はいわゆる「STAP細胞」騒動の渦中の人物である小保方晴子さんが、騒動のことをその前段となる研究や、大学時代のことから書き起こした手記。当人の視点から見ると、あの騒動はどう映っていたのか?
まず最初に。売れ行きとは裏腹に、本書を見る世間の目は冷たい。私がこの本を買ったと知った知人は「なんでまた「あんな本を」」と言ったし、別の知人には下のような感想を伝えたら、「すっかり騙されちゃったね」と冷笑されてしまった。
本書には「秘密の暴露」にあたるものはないのかもしれない。でも「私が知らなかったこと」は、とてもたくさん書いてあった。ちょっと調べればわかることなので「秘密」ではない。でも、どのメディアも調べなかったのか、きちんと伝えていないこと、が実はたくさんあったのではないかと思う。
例えば、問題になったネイチャー誌への投稿論文の研究は、理研の小保方研究室ではなく、彼女が以前にポスドクとして参加していた、別の先生の研究室での研究だったこと。STAP幹細胞の樹立に成功した、と言っているのは、小保方さんではなく、その先生だということ。
もちろん、これをもって「その先生こそが悪者」というのは早計だと思う。口さがない人は、小保方さんのことを「虚言癖がある」なんていうようだから、これもウソだという可能性はあるのだろう。ただそうでなければ、このことが伝わっていれば、世論の反応は違ったものになっていたに違いない。
最後に。本書について「こんなものは全部、都合のいい言い訳だ」という評価もあるようだ。そうであっても、本書の内容の半分、いや冒頭からの3割だけでも本当なら、彼女は優秀な研究者だったと思う。私たちは、取り返しのつかないことをしたのではないか?と心配になった。
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