著 者:群ようこ
出版社:幻冬舎
出版日:2008年8月10日 初版発行 2016年4月1日 30版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
書店で「幻冬舎文庫編集長がオススメする5冊」という帯に魅かれて手に取った。幻冬舎文庫は創刊20周年、この間2964作品あるそうだ。その中で5冊に選ばれたのだから、これは読む価値ありそうだと思った。
主人公はサチエ、38歳。サチエの父は古武道の達人で、サチエも父の道場で幼いころからその指導を受けた。父が掲げた人生訓は「人生すべて修行」。母を亡くした後は、その父が厳しくも愛情を持って育ててくれた。
そのサチエが、大学を卒業後に食品会社を経て、自分の店として開業したのが「かもめ食堂」。サチエが素材から選んで手作りした食事を出す。一つとても特徴的なのは、その食堂がフィンランドの首都、ヘルシンキにあるということ。
物語は、サチエが異国で食堂を始めるも「客数ゼロ」の日が延々と続くところから、一人また一人と「かもめ食堂」に人が集ってくる様子を、柔らかな筆致で描く。この柔らかさはサチエが持つ雰囲気によるところが大きい。
集ってくるのはお客だけではない。途中で一人また一人と、日本からフラリとやって来た女性が加わる。「そんな理由でここまで来たの?」ちょっと呆れてしまう。いや正直に言うと羨ましい。サチエを含む女性たちに、軽やかさと心細さ、芯にある強さを感じる。
幻冬舎文庫編集長は、この本に「「生活の質を上げたい」「静かにゆったり過ごしたい」-そんなとき、お片付けや掃除じゃなく、一冊の上質な本を読めばいい。私はこれ。」という解説を付けている。読み終わってみると、この気持ちがよく分かる。
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「かもめ食堂」 群ようこ
映画「かもめ食堂」のための書き下ろし小説。この本を読むと、無性におにぎりをにぎって食べたくなります。
「素朴でいいから、ちゃんとした食事を食べてもらえるような店をつくりたい」と思い、フィンランドにかもめ食堂を開いたサチエさん。
最初はなかなかお客さんが来なかったけれど、地図で指を射したらフィンランドだったからという理由でやってきたミドリさん、荷物が紛失してしまったマサヨさんもかもめ食堂の仲間に加わり、徐々にお客さんも増えてきた。
淡々と物語は進んでいきますが、サチエさんたちは自分達…