著 者:七月隆文
出版社:宝島社
出版日:2015年8月20日 第1刷 2015年12月23日 第6刷 発行
評 価:☆☆☆(説明)
100万部のベストセラーで映画化も決まった「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」の著者による、心温まるも切ない物語。
主人公は須玉明。高校生。彼には幽霊が見える。交通事故で生死の境をさまよい、目が覚めたらそうなっていた。その明が、初恋の幼馴染や高校の同級生ら、若くして亡くなった少女たちと出会う、4つの物語をつづる連作短編集。
明が出会う少女たちは幽霊だ。亡くなってもこの世に留まっているのは、心残りなことがあるからだ。伝えられなかった言葉がある、やり残したことがある、残してきた友達が心配、誤解されたままになっている。しかし、幽霊の身では見ていることしかできない。
少女たちにしてみれば、そんな時に自分の姿が見えて声も聞こえる、同じぐらいの年の男の子に出会ったわけで、多少強引でも協力させてしまう。明も、少女たちの積極さに押されながら、協力を惜しまない。
「心温まるも切ない物語」と書いたけれど「切ない」気持ちが勝った。それぞれに「心残り」を果たして、それは本当によかった。けれども「心残り」を一つだけ果たして、それだけでいいの?と考えてしまう。十代の少女たちの潔さに対して、私の問かけは何とも未練なことだけれど。
「死後のやり直しのチャンス」は、昔から映画や小説で数多く描かれてきた。それだけ「この世に残した未練」は不変のテーマなのだろう。無粋なことを言うが、普通はこんなチャンスには恵まれない。未練のないように日々を暮らしたいものだ。
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