著 者:宮下奈都
出版社:集英社
出版日:2013年1月25日 第1刷 2016年6月6日 第9刷
評 価:☆☆☆☆(説明)
「羊と鋼の森」で今年の本屋大賞を受賞した著者の2010年の作品。
主人公はあすわ(「明日羽」と書く)。ベビー服の会社に勤める30歳手前の女性。婚約者と洋食屋で食事をしている途中で、婚約解消を言い渡された。聞けば、もっと前から、新居を捜したり一緒に家具を見に行ったりしている時には、そう思っていたらしい。
そんな失意の底にいるあすわを見て、何ごとかを察した叔母のロッカ(「六花」と書く)は、「やりたいことリスト」を作るように言う。それを、ひとつづつ自分で実現していくのだ。
それでできたリストは「一、食べたいものを好きなだけ食べる。二、髪を切る。三、ひっこし。四、おみこし。五、たまのこし。」まぁ、投げやりでヤル気があまり感じられない。でも、このリストからあすわの回復と成長が始まる。
冒頭の「婚約解消」を除いては劇的なことは起きない。リストに沿って、引っ越しをして髪を切って。これまでとは少しだけ違うことをした。そうしたら、家族の、友人の、同僚の、これまで知らなかった面が見えて来た。そのことが、あすわを少しだけ変えていく。そういうお話。あすわの言葉「私が選ぶもので私はつくられる」がキーワード。
ロッカさんをはじめとして、あすわの周囲の人がいい。けっこう普段はぶっきらぼうだったり、身勝手だったりする。でも、優しさを感じさせる言葉を、さらっとあすわにかけてくれる(あまり上手に言えないお父さんはアイスをたくさん買ってくる)。
最後に。あすわの元婚約者について。そう重要でもないだけれど、印象に残ったシーンがあるので。婚約を解消した食事からの帰りに、あすわが、どうして謝らないのかと聞く。彼は「え、謝ったじゃない」と答える。重ねて問うても「謝ったよ」と繰り返す。それも2回も。
彼はこの前に「ほんとうに悪いとは思ってるんだ」と言っている。だから「謝った」と思っている。「謝ってるじゃん」と彼に同意する人もいると思うけれど、あすわはそう捉えなかったのだ。私はあすわに同意する。そしてこれは「よくあるスレ違い」だと思う。
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「太陽のパスタ、豆のスープ」 宮下 奈都
「太陽のパスタ、豆のスープ」あらすじ
結婚二ヶ月前で突然婚約破棄された「あすわ」。
人生のどん底を経験し、目の前が真っ暗になったあすわは、風変わりなおば・ロッカさんに、やりたいこと、楽しそうなこと、ほしい物を「ドリフターズ・リスト」として書きだすことを勧められます。
ドリフターズリスト
「ドリフターズ」って「漂流者」って意味なんですね。どうもカトちゃんケンちゃんのイメージが強いけれど。(^^;)
とにかくまあ、最初は嫌々リストを書き、リストの内容を実践していくうちに、今まで自分が見えな…
『太陽のパスタ、豆のスープ』
宮下奈都 『太陽のパスタ、豆のスープ』(集英社文庫)、読了。
結婚式直前に婚約解消を相手から言い渡されてしまった主人公。
何もかもやる気を失ってしまった主人公は、叔母に言われてドリフターズ・リストを作ることに。
へぇ、ドリフターズ・リストっていう言葉があるんだぁ・・・・と思ったのですが、
読み終わってから検索してみたら、本作に言及したページばかりが引っかかってきました。
オ……