崖の国物語5 最後の空賊

書影

著 者:ポールスチュワート 訳:唐沢則幸
出版社:ポプラ社
出版日:2004年8月第1刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 1~3巻で語られたトウィッグの物語から50年後。
 トウィッグたちが命を賭して崖の国を救ったのだけれど、それでめでたしめでたしとはいかなかったようだ。石の巣病なる浮遊石の病気によって、新サンクタフラスクは地上に落ちてしまい、飛空船は空を飛べなくなってしまった。
 深森との交易のために、泥地と薄明の森を突き抜ける「大湿地街道」が建設されたが、その実権をあの忌々しいオオモズたちに握られている。というのが本書の崖の国の状況。

 そして、学者たちは夜の守護聖団と図書館司書学会に分かれて覇権争いをして、敗れた図書館司書学会は、地下の下水道へと追いやられてしまった。今回の主人公は、この図書館司書学会で司書勲士に選ばれた若者ルークだ。
 冒険あり、友情あり、成長物語ありで、今までと同様楽しめる。5巻目になるので、そろそろかと思っていたが、過去の登場人物たちとの意外な関係などが徐々に明らかになり、重層的な面白みも出てきた。

 ただ、この司書勲士たちの使命というのが、何かに打ち克つとか、問題を解決するとかではなくて、純粋にというか単純に深森の研究であることが何とも解せない。研究者は研究に人生を掛けるものなんだろうけど、それでも命がけで深森の「自由の森」まで脱出して、そこで更に厳しい訓練を受ける必要があるのか。いったいその先には何があるというのだろう。

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