鋼の魂 僕僕先生

書影

著 者:仁木英之
出版社:新潮社
出版日:2012年4月20日 発行
評 価:☆☆☆(説明)

 「僕僕先生」シリーズの第6弾。元ニート青年の主人公の王弁と、彼が師と仰ぐ仙人の僕僕先生の旅を描く。一行は中国大陸を南へ縦断し、雲南へと差し掛かる。

 雲南は唐の版図の外にあり、その西には吐蕃(現在のチベットの王朝)がある。つまり国境地帯ということだ。漢人、雲南人、吐蕃人と多彩な民族が行き交う。政治的には複雑な関係の上に成り立っている。こういう情勢が今回の物語の底にある。

 今回は、唐の王朝から派遣された「捜宝人」という、宝探しの専門家が新たな登場人物として加わる。彼が皇帝から探すように命じられたものが「鋼で作られた神」。神話の時代に使われたものらしい。タイトルの「鋼の魂」との関係が推し量られる。

 前作の「先生の隠しごと」では、人の心の内側まで見通せる仙人の僕僕先生が、あろうことか胡散臭い王の話に取り込まれかかって危機に瀕した。今回は、そういう危なげなことはないのだけれど、大活躍するわけでもない。出番自体少ない。

 その代わり重要な役割を演じるのが、新たに加わった「捜宝人」。このシリーズは毎回ちょっとした人情噺が埋め込まれているのだけれど、今回はこの「捜宝人」を巡るもの。それも「ちょっとした」ではなくて、なかなかにドラマチックだった。

 前作で登場した医師が今回も途中で登場したので、「おやっ」と思ったのだけれど、なんと隠された素性があった。これが次回への伏線になっているらしい。続きも楽しみだ。

 にほんブログ村「ファンタジー」ブログコミュニティへ
 (ファンタジー小説についてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です