ドミノ

書影

著 者:恩田陸
出版社:角川書店
出版日:2001年7月25日初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 著者の作品は「夜のピクニック」に続いて2冊目。随分前の作品を今さらどうして、という感じもしたけれど、本書に何故かずっと惹かれていてこの度めでたく読むことができた、という次第。
 著者は、面白さのツボを心得ているというか、どうすれば読者を引き付けることができるか分かっているようだ。本書は、エンタテイメントに徹していて、大人も子どもも理屈抜きで楽しめる。

 表紙をめくって少し面食らう。27人と1匹?の登場人物からのイラスト付き一言が載っている。あまり登場人物が多いと読むのに苦労しそうだから。でも、そんな心配は無用だった。27人のほとんどが、キャラクターの立ったクセのある人々だから、「あれ、これ誰だっけ?」ということにならない。
 こんなに、登場人物が多いのには訳がある。始まりは全く別々のいくつものストーリが同時進行しているからだ。それぞれのストーリーに登場人物が数人いるので、結果的に大人数になっている。そして、このバラバラのストーリーが、ある出来事が別の出来事を引き起こしながら、徐々に1つの場所になだれ込むように集約していく。タイトルとおり「ドミノ」倒し的展開だ。
 事の発端は、52歳の千葉県の主婦、宮本洋子。彼女が不用意にポーチに置いたビニール傘が、風に煽られて飛んで行ったことが、遠く離れた東京駅での大事件につながる。もちろん、そんなことは当人は一生わからないままだ。冒頭の27人にさえ入っていないし。

 数多くのクセのある登場人物の中で、私は(小学生の娘も)、エリコ姉さんが一番のお気に入りだ。こんな人が職場にいたらドキドキしてしまうだろう。次に愛すべきは額賀部長だ。この人には、笑いのツボを刺激された。これからも頑張って欲しい。

そうそう、リアリティは少し脇に置いているので、細かいことを気にすると楽しめない。読む方はリラックスして読もう。

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5つのコメントが “ドミノ”にありました

  1. 読書と時折の旅 (風と雲の郷本館)

    ドミノ(恩田陸)

     ちょっと変わった小説を読んだ。恩田陸の小説としても珍しいが、通常の小説としても異色である。「ドミノ」(恩田陸:角川書店)という作品だ。なんと主役級の登場人物が27人と1匹も出てくるのだから。ちなみに1匹とはある登場人物のペットである。 この27人と1……

  2. YO-SHI

    ゆっきさん、コメントありがとうございました。

    こんな感じの本いいですよね。好きです。
    恩田さんの本ってそれぞれ雰囲気が違うので、
    もう1冊ってわけにいかないのがつらいです。

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