著 者:森 博嗣
出版社:中央公論新社
出版日:2005年6月25日初版
評 価:☆☆☆☆(説明)
「スカイ・クロラ」シリーズの第3作。今回はいきなり戦闘シーンから始まる。このシリーズでは、独特の浮遊感がある空の飛行シーンが評判になっている。たとえ戦闘シーンであったとしても、自由感や開放感が感じられて私も好きだった。
ところが、今回はそのようなシーンがこの冒頭を除いてはない。空の飛行シーンはそれなりにあるが、主人公は自由に飛ばせてもらえなていないからだ。私が感じていた自由感や開放感は、主人公が感じていたものを共有したものだったのだ。
その主人公「僕」は、今回も草薙水素だ。前作でティーチャが去った今、この基地だけではなく、会社全体のエースパイロットになっている。そして、彼女には会社の広告塔としての役割が期待され、その結果上に書いたように、自由に飛べる機会を失ってしまったわけだ。
それから、ここで行われている戦争は、多分に政治的な意図を持ったものらしい。「政治的でない」戦争というものは想像し難いので、もう少し説明が必要だろう。この戦争は、国民に一定の緊張感を与えると同時に、反政府感情を抑制することを「政治が意図した」戦争、しかも戦禍が必要以上に広がらないよう「コントロールされた」戦争なのだ、。
こういったことは、読者はウスウス感じているかもしれないが、主人公は、初めて聞かされる。彼女にとっては「聞きたくないこと」だ。「空に上がって敵を墜とす」「自分の方が下手であれば墜とされる」というシンプルなことだけが重要で、それ以外のことは雑音に過ぎない。雑音を知ったことが、さらなる閉塞感を生んでいる。
戦争のウラ事情や、会社の上層部の思惑などは「大人の(汚れた)世界」の話。本書では所々で、「子供と大人」の話が出てくる。冒頭の戦闘シーンにも「あれは、子供のやることじゃない」というセリフがある。
この巻は、キルドレである(つまり大人にならない)草薙水素が、大人の世界に引き出されて摩擦を起こして傷つく巻であり、「死」を恐れない故に、却っていままで考えることのなかった自らの「死」を、考えることになってしまった巻でもある。
彼女が、この後、どのように「大人の世界との摩擦」にケリを付けるのか、あるいは付けないのか。気になるところである。
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ダウン・ツ・ヘヴン―Down to Heaven
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森博嗣の「スカイ・クロラ」シリーズ
森博嗣の「スカイ・クロラ」シリーズはキルドレの草薙水素を通じて、平和な世界で生きる我々日本人に対して生きる事の意味を問いかけているように感ずる。いったい何のために生きているのかと。…
この前短編集(スカイ・イクリプス)を読んで、今最初から全部通して再読中でした。ダウン・ツ・ヘヴンはシリーズ中でもかなり好きな1冊です。クサナギの飛びたい、という思いが痛いほどに綺麗だからかなあ…。
YO-SHIさんの続きのレビュー、楽しみにしてますね◎
私も今度読みきったら自分の感想をまとめてみたいです。
コメントありがとうございましたー
なんとしっかりした感想をお書きで^^;
私もキッチリ書きたいなぁーって時もありますけど、『読む楽しみ』を奪ってしまったり、個人的な感想を刷り込んでしまいそうなので、なかなか上手く書けません。
何かいい例えで感想を表現できたらなぁーっていつも思います。森博嗣さんは揶揄表現がとても上手いですよね。「スカイ・クロラ」の作品を読んでいて「あぁ、なるほど」って思う例えが沢山あって、上手い表現だなーって感心します。
PS:Yo-SHIさんも「守り人」シリーズを読んでいらっしゃるのですねー^^
liquidfishさん、コメントありがとうございます。
liquidfishさんにおススメいただいて読み始めたシリーズですが、
これは、とても好きなシリーズになりました。改めて感謝。
近日中に次号も読みたいと思います。
—-
むんちゃさん、コメントありがとうございます。
「「読む楽しみ」を奪ってしまったり、個人的な感想を刷り込んで
しまいそう」ということは、私も気になっています。
他人の感想を読んでしまうと、どうしてもそれに引きずられると
思いますから。
でも、私の感想を読んで、その本を読みたい、と思ってくれる人が
いるかも、という考えには抗いがたく、今日もせっせと感想を書い
ています。
あぁ、もうずいぶん読まれてるんですね・・
まだ スカイ・クロラ も読んでいません;;
現在、5作・・6作ですか?出てるんですよね。
私も追いつきます^^
ぷぅちゃん☆さん、コメントありがとうございます。
私もマイペースで読んでいますので、ゆっくり追いついてください。
感想待ってますよ~。
私もやっと読み終わりました(^∇^)ノ
自分にとってはシリーズの2冊目にあたる本書ですが、ますますこのシリーズが好きになりました。
次は時系列に沿って「フリッタ・リンツ・ライフ」の予定です。
さーにんさん、コメントありがとうございました。
さきほど、図書館から「フリッタ・リンツ・ライフ」の
順番がきたという連絡がきました。
私もそのうちに読みます。
ここに書いていいですかね?
「スカイ・クロラ」映画を観に行きました^^
ブログにも書きましたが・・
本のほうがいいような気がしました。
(問題発言?wwww)
原作を徹底的に興してほしいです。
カンペキコピ・カンペキ映像化。
そうじゃないと、本から入った人はやっぱ未消化感が残ります・・;;;
ぷぅちゃん☆さん、コメントありがとうございます。
映画、観られたんですね。映画館での公開は今日までだそうで。
私は、以前にお応えしたように、DVDを待つつもりなんです。
原作を読んで映画を観るのは、キビシイことが多いですね。
「ゲド」のように原作から離れてしまったものは別としても
原作に忠実なものも、原作が好きであればあるほど不満が
残るし。
原作と較べずに「映画は映画」として観るのがイイのかも
しれません。