著 者:曳地トシ 曳地義春
出版社:築地書館
出版日:2011年6月15日 初版 2011年7月1日 2刷 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
雑草についてそれぞれの特性を知り、雑草との共生を含む上手な付き合い方を教えてくれる本。
著者は、ご夫婦で農薬を使わないなどの、自然環境に配慮した庭づりとメンテナンスを行っている。いわゆる「オーガニック・ガーデン」だけれど、著者たちが考えるオーガニック・ガーデンは、農薬を使わないというだけでなく、「多様な生きものが生き生きとしたつながりを持つ庭」。オーガニックとは「余計ないことをしない。余計なものを持ち込まない」ということにつきる、とも言う。
本書の構成は三部構成。第一部が「雑草編」。庭でよく見る雑草86種の特性や対処法を解説する植物図鑑。第二部が「実践編」。雑草を生やさない方法や生かし方、草取りの道具などを紹介する。第三部が「基礎知識編」。雑草のライフサイクル、様々な分類と特性、役割などをコンパクトにまとめてある。分量的には第一部が7割超あって、第二部と三部が残りの半分ずつぐらい。
私にはとてもありがたい本だった。「はじめに」に「せっかくの庭が持ち主の精神的な負担になっているケースを数多く見てきた」とある。私がそうだった。もちろん庭を世話する楽しみは大きいのだけれど、負担にもなっている。広い庭ではないけれど手をかけないと荒れてしまう。それに雑草は庭だけではなくて、駐車場や隣家との間や家の裏にも、とにかく土のあるところなら生えてくる。そういう人がもっと安心して雑草とつきあえるように書かれたのがこの本だ。
安心につながるのは例えばこういうこと。「それぞれの価値基準による」としながらも「根こそぎ抜く」のではなく「刈りそろえる」ことを提案。5センチで刈ると雑草の生長がもっとも遅くなる、繰り返し5センチで刈っていると5センチ前後の草しか生えてこなくなる。「根こそぎ」から解放されれば、随分と気が楽だ。
雑草とのつきあいで「なるほど」と思ったのはこういうこと。「好きな雑草を残す」「ここだけは生やしてかまわないという場所をつくる」「雑草を生け花にする」。こんなつきあい方があるとは思わなかった。著者は、植木鉢に土を入れて何も植えないで置いておくこともある。何が生えてくるかお楽しみ、だそうだ。
雑草の「雑」には「取るに足らない」という意味だけれど、雑木林の「雑」には「多様な」というニュアンスがある。「雑草と言う名の植物はない」という言葉は多くの人が知っているけれど、著者は雑草に多様性を見ることで、その言葉のさらに先を行っているように思う。それは、様々な庭で実際に生き物や土を対峙しているからこそ行き着いた考えなのだと思う。
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