著 者:幸田真音
出版社:中央公論新社
出版日:2008年11月25日 初版発行
評 価:☆☆☆(説明)
読売新聞の会員制WEBサイト「yorimo」でサイン入り本をいただきました。感謝。
金融業界出身の経験を生かした「経済小説」が持ち味の著者の作品。私にとっては「あなたの余命教えます」に続いて2冊目になる。
主人公は広告代理店のAE(アカウント・エグゼクティブ)として働く香純。AEとは聞きなれないが、広告の企画から制作・実施までの一連の責任を持つ営業職のこと。ある保険会社の広告を巡ってのアップダウンのある物語を、主人公と、主人公の元夫で現上司の社長と、保険会社の若い広報マンの3人の視点から描いている。
実は私も広告主側の立場として、ちょっとだけ広告の仕事に携わったことがある。その立場から垣間見た制作側の様子に照らして、本書に描かれる主人公たちの奮闘ぶりは、かなりリアルだ。きっと、取材に基づくのだろう。そして、一つ一つの場面がとても精密に描かれる。テレビや映画の1カットを言葉で説明しようとしているかのようだ。
しかし、リアリティが面白さにつながらないこともある。業界事情など場面場面で与えられる情報の殆どはストーリーには絡んでこない。伏線好きな私の読み方にも問題があるのだろうけれど、思わせぶりなシーン(私が勝手にそう思っているだけだけれど)があっても、後には続いていなくてちょっと残念。
それで、肝心のストーリーの方だけれど、上に書いた勝手な「残念」を別にしても、もうひと工夫欲しかった。主人公が男の目から見てもすご~く「都合のいい女」でやりきれない思いがした。後半にミステリー要素が加わって盛り上がるのだけれど、広げた風呂敷がたたみ切れていない感じ。
もっとも、本の読み方には色々あって、「個々の場面を楽しむ」という人もいるそうだ。精密な場面描写がされている本書では、広告営業の現場の雰囲気や、がむしゃらに働く女性の勢いが楽しめそうだ。別れた夫が社長、というシチュエーションもちょっと気になるし...。
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(たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)
YO-SHIさん。コメントありがとうございました。トラックバックさせていただきました。
YO-SHIさんの文章は読みやすくて、分かりやすいですね。私は、理系の人間で語彙も少なく文章苦手で、その上に、感動も少ない人なので、うまく何かを伝えられないのですよ。
これからも、遊びにきますね。
chibeeさん、コメントありがとうございます。
文章をほめていただいて、ありがとうございます。
記事を書くのにはすごく時間がかかっているので、
ほめられると素直にうれしいです。
chibeeさんのブログの記事も、気持ちが
よく伝わって伝わってきましたよ。
これからもよろしくお願いします。
cc:カーボンコピー
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YO-SHIさん、こんにちは♪(o^-^o)
YO-SHIさんの「からくりからくさ」の書評の下にあったので・・
気になっていた本でした。
今まで読んできた証券、金融を主題とした経済小説とは趣が異なり、
幸田真音さん色(傾向)が少しずつ変化しはじめたのでしょうか?
幸田さんの作品の中に出てくる女性は、仕事が出来るヒトが多いので
無いモノねだりで、そいうった第一線で働く女性に憧れます。が、
アカウント・エグゼクティブの仕事・・私が出来るかといえば、
悲しいですが、100%無理です!?
YO-SHIさんからご覧になると、主人公の香純さんは、
都合のよい女性に思われましたか?
私は、結構身勝手に感じました(笑)。
保険会社の年下の広報マンくんには、後半はうんざりでした。
それにしても・・最近多いですね、外資系保険会社のCM(笑)。
かりん。さん、コメントありがとうございます。
かりん。さんは、香純は身勝手に感じましたか。
面白いですね。人によって感じ方が違うというのは。
男性と女性の視点のちがいでしょうか?
でも、広報マンくんがダメダメなのは、男性から見ても
女性から見ても、一致した見解のようですね。