著 者:中村克
出版社:サンクチュアリ出版
出版日:2009年3月10日 初版 3月20日第3刷発行
評 価:☆☆(説明)
発売間もないが、ベストセラーランキングにも顔を出しているし、ネット書店では軒並み品切れ状態だ。娘に頼まれて近所の書店を何軒か回ったけれどやはり売り切ればかりで、やっと手に入れた。つまりすごく売れている本だということだろう。本書は、ディズニーランドで本当にあった「いい話」を30編あまり収録したものだ。
私は、新聞の広告で初めて本書を知った。本書の冒頭の一話「天国のお子様ランチ」がサンプルとして全文掲載されていた。生まれて間もなく亡くなった娘の1才の誕生日にディズニーランドを訪れた夫婦の感動物語だ。うん、これは確かに泣かせる。そんな感想を持ったのを覚えている。
しかし、だ。ネットに溢れる洪水のような「感動した」「涙が止まらない」という感想は何としたものだろう。「親指の恋人」のコメントにも書いたのだけれど、「誰かが死んだら感動」というスイッチがあるんじゃないかと思う。そして、皆さんそのスイッチが入ってしまったとしか思えない。
実際、半分以上が、上に書いたような子どもを亡くした夫婦や、重い病気や障害を持つお子さんや家族の話だ。1つ1つの話はいい話には違いないが、こんな話を十数編もまとめて読んで、たくさんの人が涙を流すのは、私は何かが病んでいるように思えてならない。
念のため言うが、本書を読んで感動した方について批判めいたことを言いたいのではない。感動できる心は宝物だと思うし、確かにいい話ばかりなので涙が止まらなくなる人だっていて当然だと思う。ただ、私はこれでは泣けない、死や病気の話が多くてつらい、ということなのだ。
泣かないにしても、私の胸に響いた話が1つある。それは、自信をなくしたキャスト(スタッフ)が、ゲスト(お客さん)の言葉に救われた話だ。ありがちな話で、こんなことは「夢と魔法の王国」でなくても起きるだろうし、30編あまりの中でもひと際地味だ。それでも私の胸に響いたのは、仕事に自信をなくすことは多くの人に起きることだし、私もお客さんの感謝の言葉や何気ない一言に、勇気付けられたり救われたりしたことがあるからだろう。共感は感動の大事な要素なのではないかと思う。
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追記(2009.4.29)
本書に収録されているエピソードついて、盗用疑惑が指摘されています。既に出版社は「著作権侵害の可能性が高い」ことを認めています。「そのような本をブログで紹介して他人に推薦したままにして良いのか?」というご指摘をいただいたので、ここに追記することにしました。
いかに美しい宝石をプレゼントされても、それが盗品だとすれば良心を持つ人は喜べないでしょう。それと同じで、収録されている物語は心打つものであっても(フィクションかもしれません)、盗用したモノかもしれないと分かれば騙された気持ちにもなるでしょう。そうなっては申し訳ないので、私は本書を「良い本ですよ」とは薦めません。
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追記(2009.5.7)
5月1日付けの文書で、出版元のサンクチュアリ出版が、本書の店頭からの回収を発表しました。Amazaonも取り扱いを中止しました。よって、右上のリンクもリンク先ページがありませんが、表紙イメージの表示のために残してあります。
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追記(2009.8.28)
5月7日の追記で報告したとおり、Amazonが本書取り扱いを中止し、その後、表紙イメージの表示もなくなったようですので、右上のAmazonのリンクを取り外しました。
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最後のパレード 「ディズニーランドで本当にあった心温まる話」
書評リンク – 最後のパレード 「ディズニーランドで本当にあった心温まる話」
なるほど、書いてあることはよくわかります。私も、「死=感動、涙」みたいな状況が嫌です。わざとらしさが垣間見える気がしてついつい否定的になってしまいます。涙を流すのは悪いことではありませんが、涙を流すためにそのような本を出版社側が出版して、読み手が読むというのは考え物です。
本屋さんに行くと必ずある「感動するコーナー」
たしかに大切な人の死は、人間の本質的な喪失感に訴えますよね。
だからと言ってそればかり集められると、やはり食傷気味になる気がします。
ある意味、ああ、ここで感動させようとしてるよ、なんて、覚めた目で見てしまう。本来の楽しみ方が出来ません。
売れる本と、読みたくなる本が一致しない今日この頃なのでした。
あみだすさん、コメントありがとうございます。
私の気持ちをうまく読み取っていただいたようで、うれしいです。
そうなんです。わざとらしさを感じてしまうんです。
それから、これは傲慢な言い方ですが、こんなにわざとらしい
「泣かせ話」なのに、ネットに限って言えば手放しの称賛が
あふれていることが心配です。「みんな、しっかりしてよ」と
言いたくなります。
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こえめさん、コメントありがとうございます。
売れる本と、読みたくなる本や読んで良かった本が一致しないのは、
ここ何年もの傾向ですね。特にバカ売れする本は、一部の例外を
除いて中身が薄いように思います。
本書のネット上のレビューを読むと、「文章が短い」「簡単」
「楽に(1時間で)読める」という言葉が、ほめ言葉としてよく登場
しています。このことは、バカ売れした本の多くに共通しています。
意地悪な見方をすれば「長い文章は苦手で、普通の本は難しくて
読むのがつらい」という捉え方の裏返しです。
つまり、こういう(本を読むのは苦手という)人に読まれる本でない
と、バカ売れにならないんだと思います。
こんにちは。
私もこの本、新聞の広告で見つけて食指が動きました。
でも、なんとなく「さあ泣け」とご用意されている感じというか、
底の浅さが透けて見えるというか、、、
けして実話の方々の体験を貶める気持ちはないのですが、、、、
で、いったん読みたいと思ったものの、特に探したりしていませんでした。
なので、おっしゃること、分かる気がします。
時短を売りにした本が売れるというのも、本当にそうですね。
先日池上彰氏の「14歳からの世界金融危機 」という本を見つけました。
売れている理由ははサブタイトルの「45分でわかる」のようで、ちょっと、ムムムです。
わかりやすい解説の大ファンですし、テーマもターゲットも魅力的なので、いずれ読もうとは思っていますが・・・。
さーにんさん、コメントありがとうございました。
私の気持ちを「分かる気がする」と言っていただいて
ありがとうございます。
この本には、2chからの盗作疑惑が持ち上がっている
ようです。「最後のパレード 盗作」で検索すると
関連する情報が探せると思います。
真偽のほどは分かりませんが、盗作疑惑が本当だと
すると、許しがたいです。
ところで「45分でわかる! 14歳からの世界金融危機」
ですが、これは私も読んでみたいと思います。
物語とは違って、説明は分かりやすく簡単にすることは、
とても大切で、かつ難しいことだと思います。
おっしゃるとおりですね。
私も泣きました。。でも、
美談ではなく、この世に残されたものへの、もっと、真剣に今を生きろというメッセージだと思い、
「なにげなく、生きない」ことを再確認させてもらいました。
日記で、引用させて頂きました。ありがとうございます。
<A書評>最後のパレード
編集者の橋本圭右さんとお会いしたので、
とっても感じのいい人だったので、
どんな本のかは・・全く知らなかったけど・・・迷わず、購入。
『最後のパレード〜ディズニーランドで…
美崎栄一郎さん、コメントありがとうございます。
misaki2.net拝見しました。ビジネス書の著者の方々を
招いての朝食会など、ご活躍のこと羨ましく思います。
また、私の記事を紹介いただき、ありがとうございます。
この本から自分たちに向けたメッセージを感じとられた
その感性の感度の良さに敬服します。
今後ともよろしくお願いします。
読売新聞からの盗作(しかも地元の遊園地)、2chからの盗作。金儲けのためならなんでもするのかね?
damedameo2001さん、コメントありがとうございます。
読売新聞に掲載された「小さな親切はがきキャンペーン」
の入賞作品がほぼそのまま収録、という報道が各社から
されていますね。
出版社の社長さんは、「ネットで周知のエピソードで
盗用ではない」という主張をされているようです。
これは、ネットの書き込みをそのまま引き写して出版した、
と認めたも同然で、盗用かどうか以前に、出版人としての
モラルの問題のような気がします。
既にほぼ全てののエピソードが盗作であると検証されています。
版元は本書を回収し、Amazonも取り扱いをやめました。
本日読了。本はBOOKOFFで買いました。(図書館にもありましたが。)内容は別にして、出版業界がこの本を抹殺、差別している現状が気になります。ISBNの登録が消されてます。売るためのコードなんですね。こういう本があった、ということは記録に残してもいいのでは、と思いました。
私にとっては、泣きたい本、ということで盗作にはこだわっていません。
なべさん、コメントありがとうございます。
収録されているエピソードは心打つものが多く、そのことまで
否定してしまうのはどうかと私も思います。
読む立場としては、盗作や捏造(フィクション)でも構わない、
という考えもありだと思います。
ISBNの登録が消されているとしたら、それはどういう経緯で
そうなったんでしょうね。登録者の了承なしにはできないと
思うのですが、そうでなくて何らかの圧力で消されたのだと
したら問題ですね。