編 者:ポスタル・ノベル
出版社:双葉社
出版日:2010年7月4日 第1刷発行
評 価:☆☆(説明)
先日の「バイバイ、ブラックバード」のレビューの終わりに書いたように、「私が気が付かないアッと驚く仕掛けがあるのでは」と思った私は、本書の存在を知って矢も盾もたまらず、速攻で買ってしまった。100ページしかなく、しかも後ろ半分は「バイバイ、ブラックバード」の下敷きとなった、太宰治の「グッド・バイ」が掲載されている。
実は「グッド・バイ」は青空文庫で読んでいたので、私にとって本書の価値は前半40ページ余りにしかない。30ページが伊坂幸太郎さんへのインタービュー、10ページ余りがフリーライターの門賀美央子さんによる「解説」。正直に言って、わずか630円と言えども一瞬買うのを躊躇した。
伊坂さんは、自分の作品について「求められれば、抗うことも隠すこともなく、丁寧に誠実に話をする」作家さんだと思う。雑誌やサイトなどのインタビュー記事の多さからそうと分かる。私は、「いつもは雑誌の一部分であったり、サイトに無料で公開しているインタビューを、今回は本にして630円で売ることにしたのか」と受け止めてしまった。
内容は悪くない。作家自らによる創作ウラ話は読者を楽しませるし、「解説」は「グッド・バイ」に字数を割き過ぎているように思うが、それも「バイバイ、ブラックバード」を楽しむ助けにはなる。悪いことは何もないのだけれど、上に書いたことと、「私が期待したものはここにはなかった」という身勝手な理由から、私は楽しめなかった。
ちょっと視点を変えると、出版社の「企画」通りだったとも言える。そもそも1話につき抽選で50人だけに届く「ゆうびん小説」という「企画」から始まっているのだ。終了後にまとめて書き下ろしの1話を加えて書籍化し、同時に「~より楽しむために」なんて本を出す「企画」。マーケティングとしては、ストーリーが整っていて良くできている。
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