シアター!2

書影

著 者:有川浩
出版社:アスキー・メディアワークス
出版日:2011年1月25日 初版発行 
評 価:☆☆☆☆☆(説明)

 有川浩さんの最新刊。メディアワークス文庫創設の目玉として刊行された「シアター!」の続編。ダ・ヴィンチ(2010年1月号)に「もし読者さんに受け入れてもららった時は、続きを出せるようなものを」という著者のインタビュー記事が載って1年あまり。私の周辺では、読者は「受け入れた」なんてもんじゃなくて、続編を「切望」していた。
 前作は、悩める青春をスカッと描いた爽快感のある物語で楽しめた。しかし続編を「切望」した理由はそれだけではない。舞台に魅力的なキャラクターが11人もいるのに、ライトが当たったのは数人。「これじゃ全然足りない」という飢餓感にも似た気持ちが、切に続きを求めたのだ。

 登場人物の11人は、そこそこ力のある小劇団「シアターフラッグ」の面々。公演を打てば千人を超えるお客を呼べる。しかし、これまでの丼勘定の経営が祟って、300万円の借金がある。それを劇団の主宰である春川巧の兄、司が肩代わりをしている。2年以内に全額返済できなければ劇団を解散する、という条件付きで。
 物語は、11人のそれぞれの胸の内を少しづつ明かしながら進む。劇団を大事に思う気持ちはひとつだけれど、芝居に対する立ち位置もそれぞれ違う。それが微妙な隙間をつくり、秘めた恋心(周りにはバレバレなんだけど)が複雑に絡んで、時に衝突を起こす。

 この「衝突」こそが「ドラマ」なのだ「青春」なのだ。おしぼりを相手の顔面に投げつけたり、投げ返したり。好きな人のところに飛ぶようにして駆けつけたり。彼らには悪いが、これが私が「これじゃ全然足りない」と思っていたものなのだ。つまり、本書は前作で感じた気持ちに見事に応えてくれた。そして読み終わった今の気持ちは「もっとたくさん欲しい」。続編が待ち遠しい。

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