著 者:香山リカ、森健
出版社:中央公論新社
出版日:2004年11月10日発行
評 価:☆☆☆☆☆(説明)
この本の言わんとすることに全く異議が無い。私としては、ひどく常識的なことが、多くの引用を用いながら、解きほぐされている。
中に登場するケータイがなければ暮らしていけないような「ケータイ姫」(メールにいつ何時でもすぐさま返事をしなくてはいけない。それがつながりの証だと思っている)の感性は異常だと思うが、現実に存在する。ならば、彼女を否定しても始まらない。現代のメディアと生活をテーマとして考えるなら、出発点、少なくとも前提にはしなくてはならない。
この本が当たり前のことを書いてありながら有益だと思うのは、身の回りに非常識な見識がはびこっているからだ。「ゲーム脳」のことを、非科学的な説と言い切る意見があることを、つい最近まで知らなかった。「何だってやり続ければおかしなことになるだろう」ぐらいには、肯定の気持ちがあった。しかし、脳波の測定からα波β波の解説まで、全くデタラメなのだと言う。こんな話を基に、自治体がテレビやゲームを制限する政策決定をしてしまったら良い笑い者だ。
しかし、あんなのはデタラメだ、と笑って済ませる問題ではない。子どもたちがネットの危険に晒されていることは、ゲーム脳とは別の次元で重要な問題なのだ。誰かが正しい方法で子どもたちにネットに対する耐性を身に付けさせなくては、悲劇は繰り返される。「危ないのはネットとカターナイフ」と言って、取り上げても意味ない。
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