著 者:伊坂幸太郎
出版社:東京創元社
出版日:2012年5月30日 初版
評 価:☆☆☆(説明)
伊坂幸太郎さんの最新刊。書き下ろし長編は本書が10作目、「マリアビートル」以来で1年半あまり。
主人公は「私」と、猫のトム。「私」は公務員で、妻の浮気が発覚して居心地が悪くなった家を出て、釣りに出かけた船が時化にあって、どこか分からない場所に流れ着いたらしい。目が覚めたらそこにいた、そして目の前(というか胸の上に)いた、猫のトムが話しかけてきた。本書の大部分は、こうしてトムが「私」に話したトムの国の物語。
「トムの国」と言っても猫の国ではない。人間の国王が居る人間の国で、猫は人間とつかず離れず「猫らしい」自由な暮らしをしている。まぁ、私たちの世界と同じように。ただ違うのは、この国の猫は人間の言葉が分かる(私たちの世界の猫も分かるのかもしれないけれど)。どこへでも怪しまれずに入り込めるので、人間たちのいざこざや人間関係なども知っていて、けっこうな「事情通」なのだ。
トムの国は8年間続いた隣国「鉄国」との戦争に敗れ、国王が居るこの街に、鉄国の兵士たちが統治のためやってきた。鉄国の兵長は、どうやら冷酷無比な人物で、有無を言わさずに国王を射殺し、街の人々には「外出禁止」を言い渡す。「必要なものは奪われ、必要でないものも奪われる..戦争に負けるとはそういうことらしい」という、長老の言葉が人々に重くのしかかる。
クーパーとは杉の木の怪物のことで、トムの国では、クーパーと闘う兵士のことが、半ば伝説的な物語になっている。クーパーの話と、鉄国の兵士に統治された街の話と、「私」の話の3つが縒り合される時が、この物語のクライマックス。
帯には「渾身の傑作」とあるのだけれど、私はちょっと物足りなく感じた。伊坂さんは以前から「抗いようのない巨大な力」を描き、テーマはシリアスなのに、物語全体が重苦しくならない。どこかカラッとした雰囲気と可笑しさを感じる。「戦争に負けた国」を描いた本書もそれは同じで、その点はとても良かったのだけれど。
コンプリート継続中!(単行本として出版されたアンソロジー以外の作品)
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「夜の国のクーパー」伊坂幸太郎
この国は戦争に負けたのだそうだ。占領軍の先発隊がやってきて、町の人間はそわそわ、おどおどしている。はるか昔にも鉄国に負けたらしいけれど、戦争に負けるのがどういうことなのか、町の人間は経験がないからわからない。人間より寿命が短いのだから、猫の僕だって当然わからない――。これは猫と戦争と、そして何より、世界の理のおはなし。どこか不思議になつかしいような/誰も一度も読んだことのない、破格の小説をお……
伊坂流、童話
小説「夜の国のクーパー」を読みました。
著書は 伊坂 幸太郎
お馴染みの伊坂作品
今作はまた新境地というか
ファンタジーといえ、大人の童話というか・・・
喋る猫、国王、兵士たち
なんだかごった煮というか
まさにジャンル分け不能なそんな感じながらも
そこは伊坂……