著 者:道尾秀介
出版社:角川書店
出版日:2009年11月20日 初版発行
評 価:☆☆☆(説明)
2009年下半期の直木賞候補作。まるで霧の中にいるような、不透明な漠とした不安感を全編を通じて感じた。
主人公は友彦。物語は、友彦が高校生だったころの16年前を思い出す、回想として語られる。友彦は事情があって、隣家のシロアリ駆除業を営む乙太郎の家で、乙太郎とその娘のナオの3人で暮らしている。その乙太郎は、7年前に妻の逸子と娘(ナオの姉)のサヨを亡くしている。
そして友彦には、サヨとその死について、友彦だけが知っている秘密があるらしい。友彦が、乙太郎たちと表面上は穏やかに暮らしながら、胸には秘密を秘めていることが、この先に何が起きるのか?という不安感を漂わせる。その不安感は、智子というサヨに似た謎めいた女性が絡むことで、さらに増していく。
本書は、事件の真相が一つのテーマなので、ミステリーに分類される作品だろう。真相は、中盤以降に少しずつ明らかになる。友彦が秘める秘密も明らかにされる。しかしそれでも霧はなかなか晴れない。誰もが秘密を抱えていて、それが明らかになる度に、それまでと全く違う景色が見えてくる。
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